日産自動車は、放射冷却製品の開発を専門とするラディクール社と共同で、自動車用自己放射冷却塗装を開発した。6日に公表した開発塗装の実証実験では、夏場の直射日光による車室内温度の過度な上昇を防ぐことで、エアコン使用時のエネルギー消費を減らし、燃費や電費の向上に貢献すること示した。

現在、トラックや救急車など炎天下においての走行が多い商用車への採用を検討しており、商品化に向けて改良に取り組んでいる。

新開発塗装に使用している塗料はラディクール社と共同開発したもので、電磁波、振動、音などの性質に対し自然界では通常見られない特性を持つ人工物質「メタマテリアル」を採用。今回は「熱のメタマテリアル」として、晴れた冬の夜間から早朝にかけて起こる放射冷却と同じ現象を人工的に引き起こすというもの。

これにより、太陽光を反射するだけでなく、車の屋根やフード、ドアなどの塗装面から熱エネルギーを大気圏外に向かって放出することが可能となり、車内の温度上昇を抑制する。

車内で最大5℃低減

新開発塗装した車両と通常塗装した車両を比較した際には、外部表面で最大12℃、運転席頭部空間では最大5℃の温度低下が確認された。

なお、開発においては2018年からラディクール社との共同開発の可能性を探り、2019年にはフィルムによる冷却効果を確認。更に自動車への適用を考慮し、2021年から塗装の共同開発を進め、今回の実証実験に至った。

日産は、開発塗料の車への適用化を図り、エアスプレーでの塗布やクリアトップコートとの親和性、同社の厳格な品質基準などさまざまな条件への対応に取り組んだ。

約3年の開発期間において、100以上のサンプルを作製し、一般的な自動車塗装に用いられるエアスプレーでの塗装に成功した。また、塗装の欠けや剥がれ、傷、塩害などの化学反応に対する耐性、色の一貫性、修復性にも現時点で問題がないことも確認した。

更に、自動車用塗装への適用として塗装膜厚においては、同等の冷却性能を確保しつつ開発当初の120μm (0.12mm)から大幅な薄膜化に成功した。商品化に向けて更なる薄膜化に取り組んでいる。なお、この塗装の効果と耐久性を検証するために、羽田空港において2023年11月から1年間の実証実験を実施している。