関西ペイント販売は漆喰塗料「アレスシックイ」の応用品の本格展開に乗り出す。このほど、和プラス（福井県福井市、市橋勝社長）と共同で漆喰コーティング和紙の機能性シートを開発、第1弾は自動車の車室向け消臭シートとして商品化する。タクシー業界への事前モニタリングで消臭効果に大きな反響が寄せられていることから商品力を確信。「あまねく市場に好感されるアイデア商材のため塗料販売店のビジネス拡張にも有効」とし展開を始める。
開発したシートは関西ペイントの弾性漆喰塗料「アレスシックイモンティアート」を越前和紙にコーティングしたもので、空気がシートの表面に触れると消臭・抗菌・抗ウイルスなど漆喰の持つ効果を発揮。加えて和紙の特性である調湿作用により結露やカビを抑制、まわりの空気質を改善し、室内環境を快適化する。
シートのサイズは58cm×35cmで表面はインクジェットによる任意のデザインが可能（特注）。風景などを印刷してポスターやタペストリーのように楽しめる他、企業情報や商品などを印刷、広告媒体としても利用でき活用範囲が広い。
同社が第1弾のターゲットに据えたのは自動車の車室内での需要。「しっくい和紙貼りますCAR」の商品名で、今年9月の発売に向けて準備を進めている。同品を車内の天井に装着して利用し、消臭や抗菌、抗ウイルスなど車内の空気質改善、車内環境快適化商材として展開する。ほぼすべての車種の天井材（起毛シート）に装着できる面ファスナーを手当てできたことで商品化が実現した。誰でも簡単にワンタッチで天井に着脱できるのも大きなセールスポイント。
この開発品にいち早く反応したのがタクシー業界だ。不特定多数の人が利用するタクシーは、狭い個室空間の中にさまざまな臭いがこもるため、臭いに対してとても神経質。
今回、同社からの依頼で「しっくい和紙貼りますCAR」のモニタリングに協力したタクシードライバーで個人タクシー組合・新和個人タクシー協会副理事長の増穂次男氏は、「私たちの同業者は臭い対策で芳香剤を多用していますが、逆にその臭いがクレームになることもよくあります。特に近年、人工的な香りに含まれる化学成分が健康被害をもたらす"香害（こうがい）問題"が広がっており、対応に苦慮していたところです」とコメント。増穂氏の協会を通じて同業者のタクシー数十台にもモニタリングを実施。ほとんどのモニターから「臭いに対して効果がある」との回答が寄せられ、商品力を確信。
増穂氏自身も、「乗務時にドアを開けると、以前は嫌な臭いがこもっていたのですが、シートを貼ってからはそれがない。違いが歴然としています」と太鼓判。芳香剤や消臭スプレーなどと異なり「漆喰と和紙という天然のものからの効果」も好感できるという。
関西ペイント販売建築塗料販売本部の中野佳成本部長は「車内の臭い対策という問題解決に加え、デッドスペースでしかなかった自動車の天井を、それをきっかけに話が弾むコミュニケーションツールとして、また広告媒体やインテリアデザインなどとして活用できる、これまでにない付加価値商材として完成した」と自信を示す。
同品の標準小売価格は2,800円／枚、1台当たり2枚の使用で消臭効果持続期間は約6カ月を想定。タクシー、レンタカー、カーシェアリングなど不特定多数の人が利用する自動車などを対象に年間6億円の販売を目指す。
生活者市場につながる商材
関西ペイント販売が同品に込めるもう1つの大きな意味合いは「塗料販売店のビジネス拡張支援商材」（中野氏）としての位置づけだ。臭いという普遍的な悩みの問題解決に加え広告媒体やデザインシートとしても活用できる両得感、車の天井を利用するユニークなアイデアや誰でも簡単に着脱できる簡便性など「これまでにない面白い商材としてさまざまな市場にアプローチでき、ビジネスの枠を広げるのに有功」（同）との立場をとる。具体的には一般消費者に販売する商材として、また地域のタクシーやレンタカー、臭いに困っている各種施設などの事業者に対してすぐにアクションを起こせる他、町内会や子供の学校関係、各種サークル活動などのネットワークもビジネス化の資産になると想定する。
「塗料の需要が縮小する中で、B to Bの枠組みの中だけで完結する従来型の商売とは異なる視点での訴求が必要。業界の大きな課題は最終需要家の生活者につながり、そこでの塗料・塗装の価値化や魅力化をいかに図るか。当社では生活者にアプローチできる商材、業態変革にチャレンジできる商材を今後とも販売店さんに提供していきたいと考えている（同）」とコメント。
