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ゴルフ練習用ボールを高品位リペイント

壁工房(茨城)

塗装で培ったスキルが意外な分野で生かされている事例がある。茨城県や千葉県を中心に住宅の新築・リフォームなどを手掛ける塗装会社の壁工房(茨城県つくばみらい市、社長・須賀賢一氏)は2023年、ゴルフの練習場で使用する練習球をリペイントして再生する「ブラボー!ル」事業をスタート。地道なPR活動を進め少しずつ市場の認知度を高めている。独自開発した専用塗料を薄塗りすることで新品のような外観や繰り返しの使用に耐える耐久性を実現した。

 


壁工房は須賀氏(写真)が1997年に立ち上げた会社で、壁や屋根の塗り替えを主事業とする他、2019年からは経年変化によるトラブルが発生しにくくなるアイデアを盛り込んだ新築住宅を提案する建設事業も手掛けている。

また須賀氏は、近隣の学校でボランティア塗装を行う製販装の有志グループ「結」を主導したり、3Dプリンタ住宅の動向を継続的にリサーチしたりといった活動も行っている。「周囲にアンテナを張り、面白そうと感じたら行動に移すことで、自分の知識や経験を生かせるフィールドを少しずつ広げられました」と笑顔を見せる。

そんな須賀氏がゴルフの練習場で使われる練習球(レンジボール)のリペイントに着目したきっかけは、コロナ禍の時期にさかのぼる。同社でエクササイズ用のバランスボールにデザイン塗装を行う機会があり、これをHPのブログに掲載したところ「弾力のあるバランスボールに塗装できるならばゴルフボールにも塗装できるのでは」との問い合わせが寄せられた。

「具体的には『ゴルフの練習場ではレンジボールは基本使い捨てだが、近年はボール価格高騰や納期の長期化でこれまで通りにはいかなくなっている。ボールを塗り直すことで再生利用できないか』との内容でした」と須賀氏。

また、市場には既に塗り直した再生ボール(リペイントボール)はあるものの「クラブで打つと塗膜が剥がれたり、周囲に飛散したりする。ショットの際にボールは大きく変形するが、それでも剥がれない高品質なものがほしい」との切実な要望だったという。

この話に興味を感じた須賀氏は、リペイントに適した塗料の探索を開始。紆余曲折の末に有望な機能を備えた塗料を見出し、メーカーと協力して改良を加えレンジボール用のポリウレタン系2液溶剤系塗料を開発した。

これにより、練習場から使い古しのレンジボールを回収しリペイントして返却するビジネスの見通しが立ち、2022年に塗装設備などを設置した工場を整備。「ブラボー!ル」事業として始動した。現在、北海道から沖縄まで全国のゴルフ練習場で採用例があり、徐々に認知度が高まっている。

事業の概要は、契約した練習場から汚れが固着したり黄変したりしたレンジボールを工場に送ってもらい、機械を使って洗浄した後に専用塗装機でリペイントし、インクジェットプリンタでロゴを印字して返却する流れ。5,000球から対応し、納期はボールが工場に到着してから10日~2週間程度となる。価格は1球30円~で、顧客からは「新球を購入するよりもコストメリットがあり、思った以上に品質が良い」と喜ばれているとのこと。

薄い塗膜で耐久性を確保
須賀氏によると、レンジボールのリペイントで最も重要なのは新品同様の外観であること。基本は白だがオプションで黄色などの着色にも対応できる。

これに加え、繰り返し使用しても塗膜が剥がれたりヒビ割れたりしない耐久性があること、更にはリペイント前と打感が変わらないことも大切だ。同社はテストを繰り返し3μmの薄く均一な塗装でこれらの課題を解消した。

須賀氏は「塗料は乾燥すると塗膜内で互いに引き合う力が生じ、その力で下地に定着します。塗膜が一定以上の厚みになると引き合う力が強くなり過ぎ、ひび割れや厚みムラにつながります。薄塗りであればこうした問題が起きないことが分かりました」と説明する。

実際に同社のリペイントボールは、専門の試験施設において人間では不可能なクラブヘッドスピード70m/sの高速スイングで何度打っても塗膜は剥がれず、遂にはクラブが折れたという。

またリペイント前後でほとんど重さが変化しないことにより、打感への影響が抑えられているようだ。「ゴルフ練習場でボールを変えた場合などに『打感が重い』『硬い』といったクレームが入ることは少なくないそうですが『ブラボー!ル』に関してはそうした反応は一切聞いたことがありませんね」と胸を張る。

品質はプロからもお墨付きを得ている。須賀氏が全国の練習場を行脚して営業活動を行う中で出会った内田政美ティーチングプロは、同社のボールを試し打ちしてそのクオリティに驚き「従来のリペイントボールの概念が変わる」と絶賛のコメントを寄せている。

「塗料・塗装の専門家として培ってきた技術や工夫を注ぎ込み、簡単に真似できないボールができたと自負しています」と力を込める。例えば温湿度などの条件に応じてその日に使用する塗料を細かく調整しているとのこと。

須賀氏は塗料・塗装業界の関係者にも「ブラボー!ル」のことを知ってほしいと願っている。
「業界にはゴルフを愛好する方が多いと聞いていますので、情報交換したり、協力関係を築いたりといったことにつながればと期待しています。何より、塗装技術は発想次第でまだまだいろいろな可能性を秘めていることを共有したいですね」と熱を込めた口調で話した。


須賀賢一氏
須賀賢一氏
洗浄機や塗装機などを備えた工場
洗浄機や塗装機などを備えた工場
左がリペイント後、右が塗装前
左がリペイント後、右が塗装前

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