塗装のボランティア団体「塗魂(とうこん)ペインターズ」が躍進している。全国の塗装店など会員数は300社を突破し、これまでに実施したボランティア塗装の件数は国内外で200カ所に達した。10月10日、2代目から3代目執行部への継承式が行われ、次代を担う若いリーダーたちに未来が託された。「社会貢献」でつながった同業者連携は結成から15年を超え、息の長い本物のボランティア集団として歩みを進めている。
塗魂ペインターズは、町場の塗装店の有志13社で2009年9月に発足した。当初は、ビジネスでの同業者連携を視野に協議を始めたものの、利害関係が生じてしまうことからとん挫。そのときにメンバーの1人が発した、「どうせなら、社会に役立つ団体にしよう」の一言が起点となり、ボランティア団体として生まれた。経済的な目的よりも、精神的なつながりの方が同業者連携のポテンシャルを引き出せるのではないか、逆転の発想であった。
そこから、"塗装でできる社会貢献"を掲げて活動をスタート。『建物をメンテナンスしたいけれど、予算などの都合でできない』といった施設からの要請に応えてボランティア塗装を実施、活動を重ねていった。
幼稚園や学校や公共施設、震災や自然災害で被害を受けた建物、財政破綻した自治体の庁舎、難病と闘う子供たちの家族が宿泊できるファミリーハウス、そして遠くリトアニア共和国の杉原千畝記念館の修復工事など国内外のさまざまな建物や施設でボランティア塗装を実施、多くの人や地域に感動と共感の輪を広げた。
その活動が熱を帯びるにつれ、同業者(塗装店)の入会が増えた。社会貢献のもとに集う同業者連携のかたちが、新たな可能性を感じさせたからだ。上下や損得のないフラットでフランクな関係性、ボランティア活動を通じた共感ベースの連帯が会員同士の相互啓発へと連動し、互いのビジネスにも影響を及ぼす好循環。「塗魂(とうこん)の活動に参加するためにも、仕事を頑張らないと」(会員)と、社会貢献をバネとした企業成長の方向が共有された。
会員は皆、全国各地の現場へ自費で駆けつけ、ボランティア塗装を実施。金額に換算すると何百万、ときには本格的な足場を伴った大規模修繕レベルのボランティア活動に及ぶこともある。会員増に伴い、現在は各地のブロックや地域ごとでボランティア塗装が行われ、その分件数も増えている状況だ。
「傷んでいた建物が目に見えてキレイになるし、子供たちや関係者の人たちと一緒に作業して喜びを共有できるケースも多いので、塗装はボランティアに最も適した活動だと思う。ずっと続けていきたい」と、会員のモチベーションは高い。
若い執行部に継承、未来を託す
その塗魂ペインターズの2代目執行部体制から3代目へとつなぐ継承式が10月10日、グランドニッコー東京台場で開かれた。同会の会員及びその従業員、協賛塗料メーカーや応援団など合わせて500名近くが参集し、盛大に執り行われた。
2代目会長の宮嶋祐介氏(群馬県・ミヤケン)からバトンを引き継いだ佐々木拓朗新会長(千葉県・ユウマペイント=写真)は、「初代の安田会長から頂いた『魂の完全燃焼』というお言葉、そして2代目の宮嶋会長が行動で示された『幸せ大家族』という、この2つのテーマをしっかりと受け継ぎ、3代目執行部の体制をつくっていきます。目指すのは、出し惜しみをしない本気の社会貢献活動と、家族のような絆の同業者連携で自他ともに幸せを追求するペンキ屋集団。そのためにも、ここまで塗魂を育てていただいた皆様に、これからの私たちの成長を見守っていただきたいと思いますし、皆様とともにこれからも成長していきたい」と決意を述べた。
30代の佐々木会長を始め、各地域のブロック長を含めた執行部のほとんどが30代の若手で構成。次代を担う若いリーダーたちにバトンが託され、「30年先、50年先へと永続するため、更に強い土台をつくっていきたい」(佐々木会長)と未来を見据える。
塗魂ペインターズの会員は小規模な町場の塗装店が大半を占めている。塗装職人から独立起業し、住宅塗装の元請けとして成功を目指すなど成長志向の強いメンバーが多く、地域一番店として活躍している社店も多い。それだけに、現況の住宅塗装市場の冷え込みは会員の経営環境を大きく左右する。社会貢献活動で培った精神や連携を、厳しい市況を乗り越えていくための活力に変えていけるか、真価が試される。
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