住宅塗装のサイドメニューに、「窓ガラス用遮熱ペイント」

屋根や外壁など住宅塗り替えサービスのサイドメニューとして有望な商品が出てきた。ターナー色彩（本社・大阪市）が今春発売した「水性 窓ガラス用遮熱ペイント」だ。熱の出入りが大きい窓ガラスからの日射を遮ることで部屋の中の温度が低下、室内の快適性を高め、クーラーや扇風機などの光熱費も抑える。電気料金の値上げで、"暑さ"と"節約"がせめぎ合う今年の夏。多くの家庭に喜ばれる塗装サービスが提供できそうだ。

住宅塗装で、屋根や外壁の遮熱塗装は定着したものの、室内の暑さ対策で本当に求められるサービスがまだ広がっていない。窓の遮熱対策だ。透明のガラスを通して室内に直接入り込む太陽の日射は、部屋の温度をどんどん高め、冷房の効きも低下。多くの家庭にとって夏場の悩みの種になっている。

その対策として窓ガラス用の遮熱塗料がこれまでにも販売されてきたが、あまり広がっていない。ネックは、平米当たり1万円前後（材工）といった高額な単価と施工の難しさだ。

とりわけ施工性に関してはハードルが高かった。対象が透明なガラスのため、塗膜の均一性を少しでも損なうと窓の向こうの景色が歪んで見えるためNGに。長尺のスポンジや超短毛ローラーなどによる施工サービスが展開されていたものの、施工の難しさから歩留まりが悪く、塗装店のサービスとして広がらなかった。

今回、ターナー色彩が発売した「水性 窓ガラス用遮熱ペイント」は、これまで普及を阻んできたコストと施工性の壁を軽々とクリアした。同社が得意なDIY分野向けに展開していることからも分かるように、とりわけ施工性に関してはこれまでの常識を覆す簡便さを実現、窓ガラス用の遮熱塗料として実用性を高めた。その開発に隠された型破りの発想が面白い。

塗装店（プロ）からも引き合い続々

ユニークな発想のひとつは、「窓ガラス＝透明」という常識を追いやったことだ。施工が難しい透明仕上げは最初から除外し、あえて"磨（す）りガラス"状の仕上げを選択した。

「透明仕上げの難しさがネックなのは分かっていましたから、初めから磨りガラス状の仕上げにすることを決めていました。目隠し用に磨りガラス状の窓用フィルムが売られているくらい一般的ですし、普段から磨りガラスの窓はよく見かけているはずなので抵抗感はないと思いました。むしろ、遮熱と目隠しの一石二鳥でお得感を感じていただけるのでは」（同社技術部）と、あえて"窓＝透明"の常識を破った。

磨りガラス状に仕上がることで、塗膜厚の不均一さを気にすることなく、ローラーでスイスイ塗ることができる。ローラーの目の模様がそのまま磨りガラスのテクスチャーになる寸法だ。

施工方法は、窓ガラスの表面を清掃し、端部をマスキングテープで処理して前準備は完了。あとは窓に直接ローラーで塗るだけだ（スポンジでも可）。従来の窓用遮熱塗料と同様、窓の内側に塗布するタイプだが、水性なので従来品のような溶剤臭がないのもメリット。1回塗りで乾燥時間は1～2時間と手離れがいい。容量330g入りで、90cm×200cmの窓をたっぷり2枚分施工できる。希望小売価格は税込み2,420円なので、平米当たりの材料代は600円ほどとリーズナブルだ。

仕上がり感は目隠しの度合いで2つのタイプを用意。しっかり目隠しをする「シルバー」と、適度な透け感で明るさをキープする「クリヤー」の2種類をラインアップした。

肝心の遮熱性能に関しては、暑さのもととなる日射熱を「シルバー」は58％、「クリヤー」は38％それぞれカット。ラボベースによる室内の温度測定では、「シルバー」タイプで6～7℃、「クリヤー」タイプで3～4℃下げる効果を測定した。部屋の中の暑さをやわらげ、クーラーの稼働を抑制するのに十分な遮熱効果だ。ちなみに両タイプとも紫外線も98％カットし、部屋の中にある物の色褪せを防ぐ効果もある。

そしてもう1つのユニークなポイントが、「はがせるペイント」にしたこと。ストリッパブルペイントの技術を応用し、塗膜をはがせるようにした。

「冬になって窓からの暖かい陽ざしが欲しくなったときは簡単に剥がしていただけるし、いつでも透明な窓に戻せる気軽さで心理的な負担も下がります」（同）と、はがせる機能をカジュアルなイメージに転化した。

この商品、同社のメイン市場のDIY分野では各地のホームセンターが店頭でのデモを展開するなど、"節電の夏"の目玉商品として火が着き始めているが、そればかりではない。プロの塗装店からの引き合いも強まっているのだ。　

「屋根や外壁など住宅の塗り替えサービスを展開している塗装店さんから、『窓の暑さ対策はお客様に提案しやすく、施工のサイドメニューとしてちょうどいい』と多くの問い合わせをいただいています。施工の手離れがよく値段も手頃で、なにより『電気料金のアップで節電を心掛けているお宅が多いので受けが良さそう』との反応です」（同）とコメント。プロの塗装店のビジネスにも役立つ商品として拡販していく意向だ。