ホームセンター業界最大の総合展示会「第61回JAPAN DIY HOMECENTER SHOW2025」が8月21日から23日までの3日間、幕張メッセ(千葉)で開催された。今回は600社、1,209小間が出展し、6万6,340人が来場した。塗料・塗装用品コーナーに17社が出展した。

ホームセンターを主要販売チャンネルとする家庭用塗料市場は、この数年、塗料需要分野別の中でも特段厳しい状況に見舞われている。

日本塗料工業会によると、2023年度の家庭用塗料の出荷数量は前年比14.0%減の2万3,681トン。コロナ禍の巣ごもり消費で沸いた2021年度と比べて約1万3,000トン減。出荷金額ベースにして約42億円の需要が失われた。

まだ2024年度の正確な数字は出ていないが、日塗工の需要実績見込み(出荷数量)では2023年度比3.1%減と3年連続の減少を確実視されている。2025年度は、個人消費の持ち直しに期待するが、「更に下振れする可能性もある」(業界関係者)と危機感を強めている。

市況悪化の最大の要因は、一般消費者による消費マインドの変化。食品や生活関連の諸物価が高騰する中でDIYに対するマインドを大きく変えたとの見方が強い。また需要期である夏場の猛暑の影響を指摘する声も少なくない。

こうした中、塗料メーカー各社は、DIYに対する個人消費の回復には時間がかかると見ており、比較的季節要因関係なく安定した需要が見込める"半プロ"のユーザー、いわゆる塗装専業者ではない多能工業者をターゲットにした製品展開を活発化させている。DIYショー2025に出展した主要各社の動向をまとめた。

■アサヒペン
アサヒペンは、着色とニス塗りを同時にできる「水性ニスPREMIUM」(今秋発売予定)の他、オリーブオイルを配合した「水性アースカラーオリーブイン」などの新製品を出展した。

「水性ニスPREMIUM」は、内装向けに展開してきた同種品の樹脂を改良し、屋内外兼用にしたのが特長。ラジカル制御機能に加え、UVA(紫外線吸収剤)、HALS(紫外線劣化防止剤)を配合し、耐候性を確保した。ニス仕上げの風合いを生かしたまま、屋外の木工品や木製品へ適用範囲を広げた。

「水性アースカラーオリーブイン」は、ジェルタイプの塗料で刷毛による不透明仕上げとウエスによる木目を生かしたステイン仕上げを可能にしたのが特長。天然オリーブオイルの配合(特許出願中)により木材のひび割れを防止することができる。

この他、「サビの上からそのまま塗れる鉄部用」(油性・水性)や「1回塗りで仕上がる強着色ウッドステイン」(油性・水性)を時短塗料・高耐久シリーズとして出展。またアイデア商品として玄関回りや庭などに敷き詰めた小砂利の散乱防止向けに「水性接着剤」(12月発売予定)を出展した。

■カンペハピオ
カンペハピオは、今秋発売予定の新商品「水性微光沢着色ニス」を前面に出展した。
同品は"従来の着色ニスより色ムラになりにくい"をコンセプトに開発した水性着色ニス。2分艶の微光沢を加えることで水性艶あり着色ニスと比べて、塗り広げやすく、均一性の高い仕上げが得られるのが特長。艶感を抑えた上品な仕上がりを演出する他、フラットな塗装感でステイン仕上げとニス仕上げを同時にできる作業性を確保した。

この他、暑さ対策商品として「水性シリコン遮熱建物用」及び「水性シリコン遮熱屋根用」を出展。住宅以外の倉庫や物置の暑さ対策に寄与する点をアピールした。
また、「サビ転換剤」を新製品として紹介。赤サビに塗るだけで黒サビ(黒色防錆皮膜)に転換し、サビの進行を抑制する。筆、軽量カップが付いた50mlの少量タイプで自転車、農機具、電化製品、釣具、タンク、配管など幅広い用途に適応するサビ止め塗料として訴求した。

■ニッペホームプロダクツ
ニッペホームプロダクツは、ブース前面に塗装実演コーナーを設置。実演ではタレントでラジオパーソナリティの川瀬良子さんが場を盛り上げ、ブース前には多くの来場者が詰めかけた。

紹介したのは、「STYLEシリーズ」として展開する手で塗る塗料「MORUMORU」及びDIYペンキ「室内壁用」「塗る壁紙」。同社担当者は「内装は塗料需要の残された領域。諦めずに愚直に普及啓蒙に努めることが重要だと考えている」とコメント。来場者も塗装体験に加わり、塗装作業の楽しさや簡便さが伝わる光景が広がった。

「室内壁用」「塗る壁紙」ともバケットタイプの容器で蓋を開けてすぐに塗り始められ、蓋を閉めると塗料をそのまま保存できるのが特長。手軽さや簡便さからDIYペイントの普及を目指す。

新商品としては、角型のプラスチック容器に梱包した「ZAKUZAKU木部保護」「ZAKUZAKUブロック・外カベ」を出展。砂状の塗膜が立体感のある仕上がり感を実現。また細かいひび割れ部に塗料が入り込むため、穴埋め効果も期待される。

その他、「マルチミッチャクプライマー」「すべり止めスプレー」に加え、参考出品として同社グループ会社がマレーシアで展開する「V-tech」ブランドを紹介。2液エポキシ接着剤や機能性接着剤、シーラントを出展し、バイヤーの反応を探った。

■ターナー色彩
ターナー色彩は、室内壁用やガーデン用とラインアップを広げる「ミルクペイント」を出展。合わせてミリタリーテイストを引き出す「ミリタリーペイントアーミー」や「IRON PAINT」を塗った小物品も陳列し、塗装意匠の風合いやアレンジする楽しさを訴求した。

また「水性遮熱ペイント(窓ガラス用)」が暑さ対策に寄与するとして販売量を伸ばしている。

同品はスポンジやローラーで塗って剥がせる窓ガラス用遮熱塗料。日射熱をカットし、室内の温度上昇を抑えることができる。窓ガラスを凹凸模様にし、外から見えにくくするクリヤー、シルバーをラインアップ。不要になったら簡単にめくって剥がせる利便性も人気の要因となっている。

「目かくしペイント(窓ガラス用)」も外からの目隠しに特化した塗って剥がせる塗料。色目や凹凸感の異なるクリヤー、ホワイト、ブラックを上市し、用途性を広げた。

■和信ペイント
和信ペイントは、ワークショップコーナーを大きく設け、ホームセンター従業員向け及び一般来場者向けにワークショップを行った。

実施したのは、「フレームBOX作り」。毎回、定員一杯となる人気ぶりでワックス以上の耐久性を特長とするペースト状ニス「Easy Varnish」を使って作業を楽しむ姿が見られた。

新商品としては園芸用売り場クロスMD(マーチャンダイジング)用として「ガーデンパレット」を参考出品。1回塗りで高い撥水性が付与できるガーデニング用塗料として開発。カラーパレットや塗装品と合わせた陳列モデルをバイヤーに提案した。

■アトムサポート
舗装用塗料を得意とするアトムサポートは、文字や数字、ピクトグラムを路面にペイントできるステンシルシートを出展。公共施設や商業施設、店舗など、駐車場向けのDIYペイントを提案した。塗料はエアゾールタイプの「ハードラインスプレーEasy」を使用。駐車場などの区画線を手軽に引くことができる。

一方、水性多用途塗料「フリーコート」においては、艶感を抑えた144色のカラーパレットを紹介。自然環境色を中心に配色のしやすさをコンセプトに据えた。ブース内では、パレットで選色した多彩なインテリアシーンを伝えた。

■ハンディ・クラウン

ハンディ・クラウンは、世界初となる綴じスタイルの樹脂筋違刷毛を出展した。
これまでも同社ブランド「INNOVA」をはじめ樹脂製刷毛は販売されているが、同社が目指したのは、「究極のスタンダード」。刷毛束を融着させる従来技術と異なり、獣毛刷毛と同じ"綴じ"を採用した。

これにより洗浄性が向上する他、毛抜けを抑止。また刷毛部のみの取り換えを可能にしたことで廃材の減少など環境負荷低減に寄与する。
「コスト面も従来の万能刷毛と同様の価格を実現した」と担当者。ブースでは水性用、油性用、ニス用、多用途用の4品種を紹介。塗装性と環境性を両立した製品として今秋発売する。

■ピーアイエー
プロスペック製品で差別化を図るピーアイエーは、プロ御用達の定番品として「ボンパラゴン」「ガシガシ」「メロン」を紹介した一方、10月発売予定の多目的用ローラー「HONU(ホヌ)」を出展した。

同品は海洋プラスチックごみ素材を使用した環境対応型ローラー。海洋ごみから海洋プラスチック、海洋ポリマー、SEAQUAL糸に加工したものをローラー生地に採用した。水性・油性塗料に対応。6インチ、13mmのみ。

また生地にドット柄をあしらったマイクロファイバーローラー「PIILO(ピーロ)」を出展。ライトでカジュアルなペイントスタイルを訴求した。

この他、タイホウは刷毛やローラーのセット品の販売とワークショップを開催。コスモコーティングは、革製品の保湿、防傷、防汚、撥水、艶出し機能を持つ「皮王」を紹介。実演に多くの来場者が集まる光景が見られた。