塗装リフォームに"健康増進"の観点を 需要縮小の突破口に

木塗協研修会

「住まい手の健康を増進する住宅改修」をテーマとした、興味深い内容の研修会が開かれた。木造住宅塗装リフォーム協会(木塗協、代表理事・古畑秀幸氏)は7月に開いた会員向けの定例研修会で、「健康寿命を延ばす断熱改修」を特別講習として開催。塗装リフォーム事業者らの会員に新たな視点を提供した。併せて「会員企業の成功事例」として、塗装業のブランディング戦略の講習も併催。オンライン参加を含め多くの会員が集った。

古畑代表理事は開会のあいさつで、「将来の塗り替え対象となる住宅着工数の減少が加速するとともに、塗り替え不要の超長期保証サイディングの採用が進む中で、住宅塗り替えリフォームの将来的な需要減少は避けられない。我々も、性能や機能を追求してきたこれまでの在り方から、住まい手の根源的なニーズに目を向けて改修市場にアプローチしていく必要がある。リフォーム事業のゴールは住む人の健康寿命を延ばすこと」と述べ、"健康に暮らす住まい"をテーマとした今回の研修会の狙いを説明した。

また、「今日、明日の視点で事業を成功に導くための参考にしてほしい」と、木塗協の会員企業・SAKURA(大阪府高槻市)の成功事例を共有、内容の濃い研修会となった。

今回、特別講習としてプログラムしたのは、日本サステナブル建築協会の谷口景一朗氏(東京大学大学院准教授)による「健康に暮らす住まいの設計ガイドブック~生活環境病の予防に向けて」の解説。昨年末に同協会が発刊したガイドブックについて、同書の整理・編集・執筆をリードした谷口氏が解説した。

同書は住まいが引き起こす"生活環境病"を防ぐため、科学的なエビデンスに基づいて健康的な住宅設計と住まい方を示した解説書。建築と医学双方の専門家が積み上げた学術的なエビデンスを、設計やビルダー、更には住まい手にも分かりやすい書籍としてまとめた。

谷口氏は解説の中で、『冬期の室内温度を18℃以上に保つ』という、WHOが2018年に提唱したガイドラインについて言及。「WHOが住宅性能で必須としたこのガイドラインに対し、日本ではそれを満たさない住宅が9割以上に達している。このため、断熱改修による住宅の改善が居住者の健康に与える影響についてのエビデンスを得るため、2,000世帯、4,000人に及ぶ大規模な全国調査を実施した」と説明。

その結果、「冬期の室温を18℃以上に保つリフォームを実施した住宅では、脂質異常症が3割低下、夜間頻尿も4割削減、住宅内における転倒も4割近く減少、睡眠の質も良化した。特に、起床時における血圧の上昇が半分に下がり、血圧の変動によるリスク低減への効果が明らかになった」と、エビデンスを添えて断熱改修のメリットを説明した。

また、熱中症による死亡事故が住宅内で最も発生している実態に触れ、「夏場の遮熱・断熱対策が急務となっている」と指摘。

「太陽高度が上がる夏の日射は、以前は庇で防げていたが、太陽の高度が下がる9月や10月になっても外気温が30℃を超える日がざらにある。従って、外付けのブラインドやサンシェードなど開口部からの日射を面で制御していく必要がある」と説明。外装リフォームの施工メニューのヒントになる情報提供を行った。

※「健康に暮らす住まいの設計ガイドブック~生活環境病の予防に向けて」:B5判224頁、3,200円+税。
地域ブランディングの成功事例共有

続いて研修の講師を務めたのは、大阪府高槻市に本社を構える塗装リフォーム会社SAKURAの本田卓也社長。創業20年で年商15億円を達成した圧倒的な地域一番店だ。その本田氏の話の中で興味深かったのが、価格競争についての話題。

「地域の競合他社より、おそらく30万円以上は高い」という平均施工単価(168万円)でありながら、地域で最も高い受注件数を獲得。そして、平均45%という高い粗利益率達成に導いているのが、地域における同社のブランディング戦略だ。

現在、月に15万枚配布しているというチラシは創業以来毎月継続。車種もラッピングも同じSAKURAカーが連日30台以上街中を走り、印象的な同社の宣伝シートが掛かった現場が常に40棟以上地域内で稼働。

更に電車や車からひっきりなしに目に入る同社の野立看板、創業以来継続している塗装ボランティアや職業体験受入れなどの地域貢献活動、地元を代表する公園のネーミングライツなど「地域の方々からすると『またSAKURAか』と思われるくらいに、当社の存在が地域の中に溢れている」と本田社長は説明。

それらによる地域への摺り込みが安心と信頼を醸成し、「『他より高くても、やっぱりSAKURAに頼もう』というブランディングになっている。それが高い粗利の源泉であり、当社の付加価値に他ならない」とブランディング活動の成果について言及した。

"地域に根付き、地域に愛される日本一の幸せ創造企業を目指す"というのが同社の経営理念。
「地域の方々に喜んでいただける活動を継続し、お客様、社員、協力施工店、そして当社に関わってくれたすべての人々の幸せを創造できる会社でありたい。そのためにも利益を出し続け、地域貢献活動や皆様への幸せ還元でいい循環をつくり続けるのが当社の使命」と理念経営の本質に触れた。