オーナー系アパマン改修の元請化に照準

賃貸アパマンの改修工事の元請受注に向け、研究会を発足させた「木造住宅塗装リフォーム協会」(略称:木塗協、代表理事・古畑秀幸氏)。戸建て住宅の塗り替え需要の低迷と将来的な市場縮小が予想される中、賃貸アパートやマンションの改修工事に成長性を見出す活動だ。この分野で実績豊富な会員を講師に、賃貸アパマンを攻める実践的なノウハウを研修、新たな領域に踏み出した。


木塗協は、塗装業など住宅外装リフォームの事業者150社ほどで構成。戸建て住宅の塗り替えを自社元請けで受注している会員が多い。ただ、この市場の市況がここ1~2年で急速に悪化するとともに、「10年先には需要が3割以上減少する」と危機感を示す代表理事の古畑氏。

「住宅着工件数の減少が加速し、塗り替え予備軍の住宅が減るととともに、40年耐久など長寿命サイディングの普及で塗り替え需要が減少。将来的には40年目の張り替えに誘導するのが外壁材やハウスメーカーの思惑で、外壁の塗り替えという概念そのものが薄まる可能性が高い」(同)と指摘する。

そうした中、「塗装オンリーでは先行きが厳しい」とし、塗装から派生できる周辺事業に木塗協の会員を誘導。中古住宅の流通拡大を背景とした「大規模リフォームを伴った中古住宅の仲介事業」と、市場の競争がまだ少ない「オーナー系賃貸マンション改修の元請事業」の研修を始めている。いずれも事業を成功させている会員が協会のメンバーとしており、住宅塗り替え事業から派生できるビジネスとして実証。それらのノウハウを共有し、協会会員の成長を目指す取り組みだ。

既に開催した「大規模リフォームを伴った住宅仲介事業」に続き、今年3月に「賃貸マンションオーナー元請け研究会」を発足。賃貸アパマンの改修市場へ向けた取り組みが始まった。

目的はオーナーメリットの最大化

同研究会は、オーナー所有の賃貸マンションの改修工事を元請受注するための研究会。3月27日に開いた1回目の研修会では、木塗協の理事でもあるパラヴィ(埼玉県朝霞市)の和田賢社長が講師を務めた。

同社は、賃貸マンションの内外装リフォームを20年以上前から展開。多数の物件オーナーと直接つながり、所有するマンションの管理リフォームを任されている。住人の入退去時の原状回復工事や各種設備の管理修繕、外装や防水の改修、空室率を下げるための内装デザインリフォームなど内容は多岐に及んでいる。

和田氏は、「賃貸マンションの改修工事を元請化するためのポイントは、コンサル的な立場でオーナーに寄り添うこと」と言及。どのような改修工事をどのタイミングで行うのが最も効果的か、優先順位をつけてオーナーに提案。加えて、節税や相続税対策も視野に、オーナーと税理士と改修業者がタッグを組み、計画的に改修工事を進めていくのがポイントと説明した。

「オーナー所有の物件を資産と捉え、資産運用の観点で改修工事を進めるのが戸建てと大きく異なるところ。既に戸数では賃貸マンションの方が戸建てを上回っているにも関わらず、専門の改修業者も少ないブルーオーシャンの市場」と有望性を示した。

タイル剥落問題で信頼関係構築

オーナー系マンション改修の元請化の取っ掛かりとして和田氏が推奨するのが、外壁タイルのアンカーピンニング工法だ。オーナーにとって外壁タイルの剥落は大きなリスク。それを取り除くことが、オーナーとの信頼関係を築く上でインパクトがあるとの見方だ。

今回の研究会の発足にあたり、和田氏が会員に紹介したのは、ピンニング工法の開発メーカー・Jfp(本社・東京都大田区)の「Jfp工法」。アンカーピンニングエポキシ樹脂注入でタイルの浮きを"確実に押さえ、止める"という工法で、「これまで多くのピンニング施工を経験してきた中で、最も実用性が高く差別化できる工法」(和田氏)として紹介。パラヴィが施工中の物件での現場見学会や、木塗協研修会でのデモンストレーションにメーカーのJfpを迎え、その実力を披露した。

「Jfp工法」は、騒音、振動、粉じん、固定力不足など従来工法の課題を解消したのが特長。「騒音や振動で住人にストレスをかけず、確実にタイルの浮きを抑えられるのでマンションオーナーへの説得力は抜群」(同)とし、アパマン改修元請化の有効策として紹介した。

和田氏は研修会の最後でオーナーとの関係づくりについても触れ、「オーナー所有のアパートやマンションの改修で自社ができることを明確化し、地場の不動産管理会社や銀行から紹介してもらう手法もある」と、ブルーオーシャン市場への足掛かりをレクチャーした。



改修工事の実物件で現場見学会
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ピンニング工法を間近で見る
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