塗料メーカーのプラサフからクリヤーまでのオール水性システムが出揃い、自動車補修用の水性塗料が新たなフェーズに入った。3月7日から3日間、東京ビッグサイトで「第20回国際オートアフターマーケットEXPO2023」が開催され、塗料メーカーからは関西ペイント、日本ペイント、アクサルタコーティングシステムズ、イサム塗料の4社が出展。塗装実演ではオール水性システムをはじめ、各社の注力製品を訴求した。オール水性システムを揃えた上で、各社それぞれの持ち味を生かし、差別化を図る。実演ブースに多くの来場者が訪れ、熱心に見入っていた。
100年に一度の大変革期を迎えている自動車業界。それに対応するべく、IoTの活用や生産性に寄与するツールなど従来なかった技術が台頭している。その中で塗料メーカーが普及を推し進めるのが水性塗料だ。その背景には環境対応や深刻な人材不足、化学物質の法規制がある。VOC排出量の削減に寄与できる水性塗料は作業者の負担軽減策として導入が徐々に進められている。また、SDGsの取り組みへの注目や労働安全衛生法の改正（予定）なども追い風となっており、大手カーディーラーをはじめ町場のボディショップでも注目が集まっている。
一方で水性塗料には乾燥性や作業性といった技術的な課題もある。そのため、各社は水性塗料に加え、コンピューター調色システムで生産性向上を図るなど、板金塗装作業全体での作業時間の短縮を提案している。「コンピューター調色システムはダイレクトに作業時間短縮につながるため、ほとんどの顧客が水性塗料に合わせて導入している」（塗料メーカー担当者）と現状を説明する。
各社の特長を生かし差別化図る
2018年にオール水性システムを他社に先駆け発表した関西ペイント。今回は昨年10月に発表した有規則フリーの自動車補修用水性塗料システム「レタンWBエコEVシステム3.0」（EVシステム3.0）を紹介。プラサフ、クリヤーの乾燥性、作業性を溶剤並みに高めたシステムで「水性塗料の課題である乾燥時間や作業性を『真の実用レベル』に高めた製品」（担当者）と自信を示す。
塗装実演ではEVシステム3.0と併せて業界初投入したプラスチックプライマー「同プラスチックプライマー」をPPバンパーに塗装。脱脂からクリヤーまでの作業を20分ほどで完了させ、作業性の高さをアピールした。
オール水性システム「nax E-Cube WB」を展開する日本ペイントは今年新たに耐擦り傷性クリヤー「同（2:1）SCクリヤー」をラインアップ。粘性制御技術で従来の水性クリヤー同等の作業性と擦り傷に耐える強靭な塗膜を両立させた。更に、次世代コンピューター調色システム「COLOBO2」を初披露。粒子感カメラを採用しメタリックなどの粒子を読むことで調色精度を向上させた。また塗料の使用量を管理できる便利な機能も備えている。新たな製品投入で水性導入に弾みを付ける。
実演ではフロントフェンダーにオール水性システムと新製品「SCクリヤー」を併せて塗装。ウェットオンウェットでの作業のスピードやマゼンタ系の原色を使用することで意匠性を訴求した。
アクサルタコーティングシステムズは新たにオール水性システムを市場投入した。従来の水性ベースコートに加え、乾燥性に優れたサフェーサーと高い光沢や良好な作業性を持つクリヤーをラインアップ。「別の分野の水性塗料の技術を自動車補修用に転用した」製品でオール水性仕様を確立した。
3日間行われた実演ではオール水性仕様の他、マット仕上げを生産性よく再現できるスタンドックスブランドの新製品マットクリヤー「スタンドクリル2KシステムクリヤースーパーマットK9150」、エネルギーコスト削減が可能な「ウルトラパフォーマンスエナジーシステム」を披露。1日ごとに実演内容を変え、製品の豊富さをアピールした。
イサム塗料は水性ベースコート「AXUZ DRY」に水性クリヤーや水性プラサフをラインアップする「PURE WSシリーズ」を加えたオール水性仕様を紹介した。有機溶剤フリーで、溶剤系同等の仕上がりを実現した製品として積極展開している。更に、同社が差別化に据えるのがパテ製品。同社では光硬化型パテ「ライトアップPLUS」をラインアップしており、パテも加えた環境対応を訴求する。また、パテ付けと面出しを同時に行うことができるため、大幅な時間短縮が可能となる。
実演ではオール水性仕様の塗装に加え、光硬化型パテ「ライトアップPLUS」も実演で披露。UVライトを照射し30～40秒ほどで硬化する光硬化型パテならではの特長を訴求した。
各社オール水性システムを訴求した上で、差別化ポイントを明確にし、水性塗料の導入を進めていく。
