暑さ対策で注目、需要家目線が市場を変える
住宅塗り替え市場が低調に推移する中、「屋根用は外壁用と比べて一段と悪い」というのが塗料メーカー共通の見方。劣化した屋根基材に対する再塗装に対する懸念から塗装業者によるカバー工法の導入が伸長する他、補助金を背景に再び普及の気運を高める太陽光パネルも将来的な塗装需要の減少を招くとして警戒感を強めている。
ただ「カバー屋根材に対する再塗装や太陽光パネル設置時に伴う塗り替え需要が期待できる」(メーカー関係者)と種々さまざまな基材の劣化、美観復元に貢献してきたのも塗料・塗装の存在価値。改修市場に向けた工法が台頭する中、塗料・塗装の優位性を社会に訴求する目線も重要になっている。
しかし、目下の課題は、低調を続ける住宅塗り替えを補完する需要の深掘り。その1つとして工場や倉庫などの企業物件に対する営業展開が活発化している。企業業績によって変動の大きい市場だが、環境対応や職場環境改善に対する取り組みが塗料需要を後押し。中でも遮熱塗料は、環境対応、暑さ対策を両立する技術として需要を伸ばしており、2025年度も前年を上回る出荷量を確保する見通しだ。
屋根用遮熱塗料が市場に投入されてからはや四半世紀を迎える。かつては地球温暖化を抑えるヒートアイランド対策として脚光を集め、原発事故を招いた東日本大震災直後は節電技術として需要を伸ばした。そして現在は、国が掲げる2050年のカーボンニュートラル(脱炭素化)や昨年6月に義務化された「職場における熱中症対策の強化」を背景にエネルギーを使わない遮熱塗料に対する関心が高まっている。
しかし、これまでと様相が異なるのは、施主である企業が遮熱機能に対する説得力、納得感のあるエビデンス(根拠)を求めている点。業界としては、これまで屋根用高日射反射率塗料JISの制定やJIS K5603を用いた遮熱性能のラベリングなど、材料の観点から社会的評価の獲得を試みてきたが、施主が求めるのは具体的な効果。それに応えようと従来のシミュレーションや試験施工から一歩踏み込んだサービスを講じる動きが活発化している。
具体的な事例として日本ペイントが昨年末、塗料・塗装におけるCO2排出算定サービス「SUSTAINA SYSTEM(サスティナシステム)」を始動。第三者機関であるSuMPOの承認に基づくカーボンフットプリント算定ルールにより遮熱塗料に限らず、取り扱い全製品における塗料、塗装時、塗装後のCO2排出量を算定するサービスを法人向けに始めた。
またミラクールと企業の営繕改修工事を手掛ける親会社のシロキコーポレーションは共同で遮熱塗料によるカーボンクレジット化の方法論を確立したと発表。新興遮熱塗料メーカーのSG化学は、大手保険会社と提携し、昨年から遮熱塗料製品に省エネ保証を付与。日進産業も昨年発行したJSA規格「高微細セラミックス塗料-塗膜の断熱性能の求め方」を積極活用する。いずれもサービスの内容は異なるものの、施主に対して具体的なメリットを提示している点で共通する。
遮熱塗料と空調費との関係においては、建物の構造や使用状況、気象環境など複雑な要素が絡むため、効果の明示についてはメーカーの判断が分かれるが、溶剤系から水性への置き換えがメインとなるCO2排出量削減においては業界全体で共有しやすいテーマと言える。ただ今回、日本ペイントは、遮熱塗料「快適サーモSi(クールホワイト)」に限り、国際的枠組みに則った「SuMPO EPD」を取得。第三者機関による環境ラベルを新たな付加価値に据えた形だ。
社会的評価の獲得に長らく苦労してきた遮熱塗料だが、製品競争から施主目線に立ったサービス展開に突破口を見出しつつある。
