型内塗装の国内市場活性化を目指す
インモールドコーティングコンソーシアム(IMCC)
欧州の自動車産業で内外装部品などの製造に使われている「型内塗装(インモールドコーティング)」技術の日本での普及促進を目的として、今年5月にインモールドコーティングコンソーシアム(IMCC)が発足した。塗料メーカーの武蔵塗料及び金型専業メーカーの岐阜多田精機が事務局を務め運営を担っている。型内塗装の要素技術である塗料技術、成形機、金型設計、注入機の4領域の関係企業や、同技術を駆使したものづくりに関心を持つ企業などに参画を呼び掛けている。
型内塗装は欧州の自動車産業で活用が広がり始めている技術で、射出成形の際に金型内で成形品の最表面に塗膜層を複合化するもの。現在は内外装部品などへの適用が進んでいる。成形工程と塗装工程の一体化により、成形と塗装が分かれている従来方式に対し工程簡略化や省エネルギー化、また意匠性向上も期待できるとして、近年は日本でも関心が高まっている。
製造プロセスの概要は、①射出成形機にて成形用金型に樹脂を注入、圧力をかけたまま金型内で冷却する(=1次成形品)②金型の一部を塗膜用金型に交換し、1次成形品と塗膜用金型の間に塗膜分の隙間を作る③塗膜分の隙間に塗料を注入し、1次成形品の上に塗膜を成形。つまり、金型内で射出成形と塗膜形成を同時に行うことを塗料、射出成形、金型、樹脂注入の4領域の技術の融合で成り立たせている。
武蔵塗料と岐阜多田精機は2010年代半ばからこの技術の将来性に着目。日本国内での普及を図るためさまざまな取り組みを行ってきた。
武蔵塗料は2019年に型内塗装向けのクリヤー塗料で実績のある独ルール社と、2025年10月にカラーペースト技術を保有する独ISL社とそれぞれアライアンスを締結。両社の技術を取り入れつつ独自の型内塗装向け塗料の技術開発を進めている。
岐阜多田精機は2020年、型内塗装技術を牽引する独クラウス=マッファイ社から成形機と注入機の一体型装置を導入し、国内で試作テストができる環境をいち早く整備。更に昨年、射出成形機メーカーの住友重機械工業と注入機を手掛ける丸加化工機、武蔵塗料と連携し国内企業4社による型内塗装成形システムを実現させるといった活動を行ってきた。
両社はこの5月にIMCC設立を発表し、現在、型内塗装に関心を持つ企業に幅広く参画を呼び掛けている。両社の同業の塗料メーカーや金型メーカーの参加も歓迎とのこと。
設立の背景を武蔵塗料の担当者は「現在、欧州や中国の自動車産業では型内塗装技術は成長市場の1つとして有望視されている。一方、日本では個社による4領域をまたぐ技術開発は限界があるなどの理由から、これまで大きな進展がなかった。世界の動向から取り残される懸念があり、こうした状況の打破が目的だ」と説明する。
岐阜多田精機も「従来は企業同士が連携した開発につながっていなかった。技術に関心を持つ企業の受け皿となる組織の創出は不可欠」との認識を示す。
IMCCは、端的には「技術検証・標準化・事業化を共創で前に進める場」と位置付けられており、会員同士の情報交換や技術交流を通じこれらのテーマを段階的に進めていく方針だ。最大の価値として打ち出しているのが実証環境を整備していること。既に設備を備えている岐阜多田精機の本社工場と山形工場(どちらも岐阜県)に加え、武蔵塗料の入間工場(埼玉県)でもクラウス=マッファイ社の注入機と住友重機械工業の成形機を導入。現在、稼働に向けた準備を進めている(写真)。
型内塗装の具体的メリットについて武蔵塗料の担当者は「自動車製造におけるCO2排出の主な要因はスプレー塗装・乾燥工程に由来している。対して型内塗装は工程簡素化によって著しく省エネルギー化できるので環境負荷低減効果は非常に大きい」と強調する。
環境面だけでなく、部材表面の意匠性向上も期待できるという。
「塗料のベースとなるポリウレタン樹脂は柔軟性に富み追従性に優れているため、金型から塗料層に微小な凹凸形状(シボ形状)が転写でき従来にない加飾表現が可能となる。また、塗装で問題となるゴミ・ブツによる不具合も低減できる。更に部材の最外層がポリウレタン樹脂層となり自己修復性が備わるため、微小なキズに対する耐久性も向上する」と岐阜多田精機の担当者は実践から得た知見を述べた。
今後の計画として、8月に岐阜多田精機、10月に武蔵塗料において「TECH DAY」を開催する。IMCC会員や入会を検討する企業に対し実証設備を使った実演などを行う。武蔵塗料が導入した設備の初披露の場となる見込み。