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次世代コーティング特集2026

インタビュー  低エネルギー開発へ、AIの展望語る

タクボエンジニアリング 

取締役会長佐々木栄治氏

佐々木氏とのインタビューから見えてくるのは、塗料・塗装業界が大きな転換点にあるという事実。「これからの塗装は、いかにエネルギーを使わないかで決まる」とエネルギー問題やAIの進化から新たな塗料技術の台頭を予見する。従来技術の課題を整理するとともに、UV硬化型塗料やUV粉体塗料の可能性、そして業界が目指すべき未来像について聞いた。


――塗装業界の現状をどう見ていますか。
「塗装というのは、実は何十年も大きな変化がなかった分野とも言えます。ただし、ここからの数年は全く違う時代になるでしょう。特にAIの進化は、塗装のあり方そのものを大きく変えると見ています。経験や職人技に依存していたこれまでの世界観とは打って変わって、仮想空間で何万回も試行し、最適な塗装条件を導き出す時代が待ち受けています。そうなれば、ワークに対し"どう塗るか"ではなく、"最もエネルギーの少ない塗り方は何か"がテーマになると考えています」

――具体的には何を変える必要があるでしょう。
「象徴的なのは、2液ウレタン塗料が抱える課題があります。工業用塗料で広く普及している塗料ですが、熱乾燥を必要とし、完全硬化まで時間がかかる特性を有しています。そのため結果的にエネルギー消費が大きく、リードタイムも長くなり、物流効率も悪くなるという問題をはらんでいます。工程全体として見ると非常に非効率であると感じています」

――その解決策としてUVに注目されていますね。
「UV硬化型塗料の最大のメリットに"短時間硬化"にあります。UV照射により瞬時に硬化するため、乾燥工程の大幅短縮、ラインの高速化が可能になります。更に重要なのは塗装工程トータルでの効果です。即時に完全塗膜になるUVであれば、傷防止のための厳格な梱包は不要になり、梱包を簡略化できます。輸送効率の向上、CO2削減、コスト削減においても大きなメリットをもたらします」

――国内ではマーケットが小さいですが、UV粉体塗料の可能性についても言及しています。
「UV粉体塗料は、これから深耕すべき技術として注目しています。180℃程度の焼付が必要な従来の粉体塗料に対し、UV粉体塗料は低温で溶かし、紫外線で硬化するというプロセスが可能になり、エネルギーを大幅に削減することができます。粉体塗料の適用が難しかった木材や樹脂、金属などへの用途展開も可能になり、塗装需要の創出も期待できます」

――普及を阻んでいる原因は何でしょうか。
「理由は単純で、従来技術の延長線上で塗装を考えているからです。メーカーは、顧客の要望に合わせた製品を作ることに向き合ってきたことも要因にあります。しかし、これからのモノづくりは、エネルギーを下げるための方法を模索する価値観にシフトしていきます。既存設備や仕様に合わせる発想では、本当の意味で技術革新は得られません」

――エネルギーから塗料・塗装技術を磨くべきだと。
「その通りです。塗料メーカー、装置メーカー、ユーザーのすべてがエネルギーを減らす方向に注力する必要があります。具体策を挙げるなら、乾燥工程をもっと低エネルギーにできないか、瞬時硬化ができないか。こうした問いに変え、取り組んでいくことです。また、これからはAIがその最適解を出す時代になります」

経験から解放されるAI時代
――AIは塗装にどのような影響を与えると思いますか。
「これまで塗装は、経験の積み重ねによって対応してきました。しかしAIは、そうした経験を重視してきた流れを一気に変えてしまいます。なぜならバーチャルの中で何万回も試行を繰り返し、最適な塗装条件を導き出せるようになるからです。人間が長年かけて覚えたことを、AIは一瞬で再現してしまいます」

――具体的にはAIをどう活用すべきでしょうか。
「一番のポイントは、エネルギー消費の少ない塗装方法の探求です。AIを使えば、"どの塗装方法が最もエネルギーを使わないか"について答えを出すことができ、その結果に従ってロボットが動けば、最も効率の良い塗装が実現します。これからエネルギーの最小化が優先される時代になることを考えると、AI抜きには語れませんね」

――AIと並び、現実空間を仮想空間で再現するデジタルツインも注目を集めつつあります。
「デジタルツインには非常に高い関心を持っています。実際の工場と全く同じ環境を仮想空間に作ることが可能となり、その中で塗装条件を試すことができるからです。生産性やコストがすべて事前に分かる世界が控えています」

――ビジネスモデルも変化しますね。
「装置やロボットなどのハードを売るビジネスからソフト(頭脳)を提供するビジネスになるでしょう。どのような塗装条件が最適かを提供する"頭脳"が価値になります」

――塗装の未来像についてはどう考えていますか。
「答えはシンプルです。AIを使うことを前提に考える。新しい技術が出てきたら、すぐに取り入れる。れを繰り返すことです。 人材においても知識や経験ではなく、興味と柔軟性を持って自分で学べる人だけが伸びる時代になると思います」

――ありがとうございました。


タクボエンジニアリング取締役会長・佐々木栄治氏
タクボエンジニアリング取締役会長・佐々木栄治氏

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