新ビジネス 熱中症対策の事業化に挑む

アイベック(本社・東京都品川区)の熱中症対策事業が主力の塗料販売事業を支える新たな事業として存在感を高めている。「想像以上に塗料販売業とのシナジーは高い」と関口豊社長。最終需要家(施主)の目線に立った商材・サービスで塗料ディーラーとしての地力を高めようとしている。


同社が工場・倉庫向け「熱中症対策事業」をスタートしたのは2019年。とある展示会に出展していた遮熱シートとの出会いがきっかけとなった。

それはガラスクロスの両面に高純度アルミ箔を貼り合わせた軽量・高強度・低放射の両面アルミ遮熱シート。屋根材の下(室内側)に、空気層、アルミ遮熱シート層を設けることで屋根部全体の熱貫流抵抗が高くなり、太陽光の影響で高温になった屋根材からの放射熱の侵入を抑制する機能を持つ。

同社は遮熱だけではない空気層断熱・放熱減効果に、普及拡大の可能性を感じたものの、理論や導入事例だけでは納得感に欠けると考えた同社は、自社倉庫を利用したデータ取りに着手する。シートあり、なしのそれぞれの倉庫に温度計を設置し、長期間にわたり、温度測定を実施した。

その結果、シートなし倉庫では40℃を超える倉庫内温度に対し、シートあり倉庫では、最大10℃ほどの温度低減効果が認められ、倉庫内温度が外気温レベルまでしか上がらないことを確認した。更にはシートあり倉庫とシートなし倉庫を行き来することで、実際に温度差を体感できたことで、効果に対する確証を得た。

「しっかりとした実証データが得られたことで販売に確信が持てるようになった」と関口氏。以来、展示会、YouTube、SNSなどでの情報発信に注力。環境省の令和6年度のETV(環境技術実証事業)の採択や昨年6月の企業における熱中症対策の義務化が市場展開に弾みをつけた。

とはいえ同社が熱中症対策として扱うのは、アルミ遮熱シートだけではない。遮熱・断熱塗料、窓用日射調整フィルム、断熱材、ファン、空調設備など扱い製品は多岐に及ぶ。「熱中症対策は、屋内に熱を入れないことが対策の基本となるが、建物構造、乾燥炉等の施設内設備などによって、対策の優先順位が変わる」というのが理由。「企業が求める目的、予算に応じてどれだけ具体的な方策が提示できるか。相談・要望から具体的な方法を明示する対話力と対応力が重要」と話す。

またアルミ遮熱シートにおいても暑さ低減策として効果、持続性、コストのバランスに優れた方策と位置づける一方で「すべての建物に適応するわけではない」とも話す。異物などの混入を警戒する工場などでは、シートに含む繊維の落下を懸念して採用に至らないケースもあり「その際は、遮熱塗装を提案する」と塗装の価値も改めて明確にしている。

抽象的な要素が多い熱中症対策の事業化に対し、同社が強みとするのは塗料販売で構築してきたユーザーとの関係性。特定業界には属さないアルミ遮熱シートの施工においては、塗装業者の参画に期待感を示す。「どこにどう頼んでいいか分からないのが熱中症対策。これまで蓄積してきた経験や関係性を生かせる余地は十分にある」と社会ニーズに向き合うことで塗料ディーラーの存在価値を見出している。



アルミ遮熱シート施工写真(アイベック千葉営業所)
アルミ遮熱シート施工写真(アイベック千葉営業所)
倉庫内温度データ2024年夏
倉庫内温度データ2024年夏

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