ボランタリークレジット(自主的炭素クレジット)の創出から取引・活用までを支援するLinkhola(東京都港区、代表取締役・野村恭子氏)は、塗料・塗装関連企業と連携し、遮熱塗料のカーボンクレジット化プロジェクトに取り組んでいる。遮熱塗料によるCO2排出削減効果の定量評価方法を開発し、施工前後での排出量の違いを評価して削減分のカーボンクレジットを発行する仕組みを整えた。

カーボンクレジットは、省エネ機器導入や再エネ活用などによってCO2排出量を削減した際に、削減量を第三者機関が審査し売買可能なクレジットに変換して発行する仕組みのこと。

例えば、A社が省エネ設備を導入しCO2排出量を10トン削減したとする。導入前後でCO2排出量が削減できたと証明するデータなどを第三者機関に提出し、審査が通るとA社に10クレジットが発行される(1トン=1クレジット)。一方、B社は環境対応を進めているが事業の性質上どうしても削減できない10トンのCO2排出に悩んでいた。こうした場合に、B社がA社から10クレジットを購入することで10トン分のCO2排出量を相殺できる。これがカーボンオフセットだ。売買価格は両社で任意に決められる。

この取引により、A社には売却益が入り、B社は自社だけでは難しかった環境負荷低減を実現できる。社会全体でカーボンニュートラル(CO2排出量の差し引きゼロ)に近づけるための仕組みとして、現在注目されている。

遮熱塗料を建物の屋根や壁に施工すると内部の温度が下がる効果が期待できる。温度低下により空調の消費電力が抑えられると、電力を生み出すのに必要なCO2排出量削減につながる。つまり、遮熱塗料施工はカーボンクレジット適用の要件を満たしている。

しかし現状、日本政府が運用する「J-クレジット」をはじめとする既存のカーボンクレジットの枠組みは遮熱塗料を取り扱っていない。こうした状況の中、Linkholaに対し塗料・塗装業界の複数の企業から「遮熱塗料施工のカーボンクレジット化を支援してほしい」との要請があり、昨年プロジェクトが立ち上がった。Linkholaの野村氏によると、遮熱塗料のカーボンクレジット化は世界初の試みとのこと。

Linkholaは、遮熱塗料によるCO2排出削減効果を定量評価する手法を新たに開発し、同社が運営するクレジット発行プラットフォーム「EARTHSTORY」に実装した。これにより、Linkholaに審査を申請すれば、同社が審査実施とクレジット発行を行える体制が整った。

申請に必要な資料は大きく3種類。①プロジェクト計画書:申請者、実施体制、クレジットの用途、CO2削減量の算定ロジック、スケジュール、創出予定量などをまとめたもの②施工前後の写真:施工の適切性を確認するためのエビデンス③電力消費データ(または代替指標):スマートメーターのデータや検針票など、電力使用量の具体的数値を確認できるもの。

審査に通るとクレジット発行に移行する。クレジットは実績ベースでの発行が原則で、まずは初回の削減分を発行し、その後は1年ごとに実際に減った量に合わせて追加で発行していく流れとなる。

実際の審査やクレジット発行まで至った事例は未だない。現状は、Linkholaと連携する塗料・塗装関連企業がカーボンクレジットに興味を示す顧客の開拓を行っている段階だ。

「施主が自社施設のクレジット申請を行うと売買市場でインパクトのあるボリュームのクレジット量にはならないケースが多いと考えられる。現実的には、施工会社などが複数案件を取りまとめて申請しクレジットを一括管理する形が効率的」と野村氏は説明する。

こうした運用では、申請者はある程度のボリュームのクレジットを取得でき、かつ遮熱塗料施工効果が数値として積み上がっていくので提案の説得力向上にもつなげられる。施主側も、自社の環境負荷低減効果を数値化し企業価値を高める活動に役立てられる。

「クレジットの売買が成立すれば施主に対し何らかの形で還元するという取り決めにしておいてもいい。大切なのは、申請者が顧客にメリットを明確に説明できるビジネスモデルを作っておくこと。分からないことがあればまずは気軽に相談してほしい」と結んだ。