遮熱と放射冷却の2つの機能で温度上昇を防ぐ塗料「ラディクール」の日本市場展開を担うラディクールジャパンは、新たに開発した自動車向け塗料の今年中の販売開始を目指している。自動車向けの塗布方法や層構成などの技術開発は日産自動車が担った。現在はビジネスの座組や方向性について両社を中心とする関係各社が調整中だ。

2017年、米国コロラド大学(当時)の楊栄貴教授らの研究チームが科学学術雑誌『SCIENCE』に「放射冷却メタマテリアル」技術を発表した。

メタマテリアルとは、通常は自然界に存在しない特性を持つ人工物質のこと。楊教授らの研究はメタマテリアルを使い、地表の熱が宇宙へと移動して温度が下がる放射冷却現象を人工的に引き起こすというもの。つまり、放射冷却メタマテリアルを他の物質と組み合わせると、物質が熱を放出し自然に冷えていく作用を促進できる。

楊教授らの論文発表後、この技術を応用した製品の開発・製造・販売を行うラディクール社が中国で立ち上がった。2019年には同社の日本総代理店であるラディクールジャパンも設立され、以降、日本でもさまざまな分野でラディクール製品が広がってきている。

ラディクール技術の塗料応用は2024年からスタート。日射(近赤外線)の反射機能を担うマイクロ粒子と、放射冷却機能を生み出すマイクロ粒子を配合し、遮熱と放射冷却の2つの機能で物体の温度を低下させる建築用アクリル系水系塗料が開発された。近年の夏場の酷暑対策として日本国内でも実績が伸びており、工場・倉庫の屋根や壁などに施工され、実際に建物内部の温度が低下する効果が出ている。

一方、日産自動車は『SCIENCE』誌での論文掲載当時からこの技術に関心を寄せており、いち早く自動車塗装向けの技術開発を実施し、既に実車適用段階に進んでいる。
 現在、日産自動車の成果をベースとした自動車向け塗料の市場投入が計画されており、関係各社での調整が進んでいる。ラディクールジャパンでは「例えば医薬品のような高温を避けたい物品を搬送する自動車や、熱中症対策の要望が高い子供の送迎バスといった既に運用中の自動車の屋根に塗る需要があるのでは」と見ている。実際、バスの屋根だけに施工した実証試験で温度低下効果が確認されている。

なお、「放射冷却力は温度の4乗に比例して大きくなる」という特徴があり、夏の方が冬よりも冷やす働きが大きい。しかし、冬場に温度を下げる作用もあるので、暖房に関する若干の増エネは実証実験でも確認されている。

建築用ラディクールは、下塗り、中塗り、トップコートで構成され、遮熱及び放射冷却機能は中塗りとトップコートが担っている。また色は白のみで、中塗りとトップコートに白顔料が含まれている。施工はローラーまたはエアスプレーに対応している。

これに対し、自動車用では最外層はクリヤーとなり、熱対策機能は中塗り層が担う。また、対応色は白のみの予定。施工はスプレーで行う。