同社は金属加工会社である山口精工(兵庫県姫路市)と塗装会社の戸崎産業(兵庫県高砂市)が共同出資により2006年に設立。工場はホーチミン市から約40km北上したビンズン省のドンアン工業団地にあり、敷地面積は1万957㎡、工場面積は7,950㎡。

事業内容はプレスや切削など金属加工をメインとし、3年前から粉体塗装事業も始めている。金属加工としては、月産300万ピースの生産能力があり、現状では220万ピースの部品を加工している。そのうち50%が日本市場向け、その他がベトナム及び第3国向けに展開。販売先日系企業は三菱電機とパナソニックがメインになる。売上は右肩上がりで増加しており、2015年は約13億円(2011年は約2億円)。

品質管理については「イン(受け入れ)からアウト(出荷)まで日本人が日本の基準で行っているのが強み。問題が起きても日本人が対応し、場合によっては日本の会社で対応できるのでお客様は海外リスクを負うことはない」(伊尻和博副社長)。

日本人は3名のみで「技術指導と責任を取る役割」(伊尻副社長)を担い、ベトナム人320人が工場で働いている。女性を積極的に登用しており、10名以上いる班長のうち男性は2名のみで90%以上が女性になっている。「あえて女性を就かせているのではなく、ベトナムの特徴とも言えるがリーダーシップを取れるのが女性に多かった」(伊尻副社長)結果の組織構成。班長には人事権を持たせており、ワーカーの採用及び解雇は班長の判断に委ねられている。

塗装については3年ほど前からハンドガンによる粉体塗装を行っていたが、今年、本格的に量産化するため大型ワークに対応できる前処理設備と粉体塗装ラインを立ち上げた。

特徴としては、鉄とアルミの大物ワークに対応できる設備となっている。鉄は最大3.5m、アルミは最大8mまで対応が可能でカーテンウォールなど建築内外装材を想定している。

前処理の化成被膜は鉄がリン酸鉄系(日本パーカライジング製)、アルミは3価クロム系(ミリオン化学製)を採用しており、加温は熱効率に優れ省エネ効果が図れることからヒートポンプ装置を導入している。化成処理後の水切り乾燥は90~95℃×3分に設定。

粉体塗装ラインの全長は約140m、搬送はオーバーヘッドコンベア式でラインスピードは通常1.1~1.5m/minで稼働するが、最大スピードは2.5mの設定が可能になる。粉体塗装設備はレシプロ2基を対面に設置。1レシプロ2ガンで吐出量は50~80g/minの設定。その後、ハンドガンによる補正を行っている。

塗装ガンは旭サナック製のトリボガンを採用している。以前は韓国製のコロナガンを使用していたが、顧客が要望する「溶剤並みの仕上がり外観」が得られないため、旭サナック製トリボガンで塗装したところ基準をクリア。自動ガンでの導入を決めた。

現在、品質の安定性を保つために粉体塗料は吹き捨てしているが、先を見据えて設備は回収再利用が可能な設計としている。色替えは1日2回ほど。塗料使用量は2トン/月。粉体塗料はアクゾノーベルをメインにタイガードライラックやジョータンを現地調達している。営業品目はアルミ建材が多いため、樹脂系は高耐候ポリエステル系、ポリエステル系、エポキシ/ポリエステル樹脂系ハイブリッドを使用しており、今後はふっ素樹脂系の使用も予定する。同時に日本からの根強い要望である溶剤塗装の展開も見据えている。

現在、粉体塗装に関しては日本の建築物件向けがほとんどでベトナム市場向けには展開していない。営業はしていない状況にも関わらず引き合いは多いというが、日本の高品質を確保する同社のグレードではオーバースペックとなりコストも合わないのが実状。ただ、ベトナム経済の発展に伴い、高グレード需要の高まりも期待できるため、同社としてもベトナム市場向けの本格展開を見据えている。