協同精機(所在地・広島県福山市、代表取締役・新川政夫氏)は大物品の粉体塗装を強みとして成長を続けている。今年5月、敷地4,800㎡の第2工場を新設し生産能力を大幅に増強させ更なる事業拡大を図る。最大8m、重量6トンまでに対応する国内最大級の粉体塗装工場をレポートする。

協同精機は30数年前から粉体塗装に取り組み市場ニーズの高まりとともにその割合を増やしてきた。7年前からは溶剤塗装を止めて粉体塗装に特化した方針に舵を切っている。6年前の平成23年には現工場に移転し、粉体塗装専用の工場設備に整えた。

新川社長は「今後、粉体塗装の需要はますます増えてくる。これまでの溶剤塗装と兼用では塗料飛散によるゴミブツなど問題があり、工場内のクリーン化や作業環境の改善という観点からも粉体塗装のみで行こうと決めた」と経緯を述べる。

最長8m対応、大物品に強み

同社の強みは大物品を効率的に塗装できる設備と技術力にある。営業品目は工作機械関連が約7割を占めており、メインの1つである外周カバーは長さ7,000mm×幅3,000mmのサイズになる。その他、食品機械や道路資材などを扱うが、サイズの問題だけでなく複雑形状品が多いため「自動ラインに流せない品物ばかり」(新川社長)という。

そのため塗装設備は自動ラインではなく粉体塗装ブースを複数基並べる。第1工場には粉体塗装ブース(サイズ:3,000mm×3,000mm×3,000mm)を7ブース配備。横並びの塗装ブースの間仕切りが開閉するため、長尺品を塗装するときには間仕切りを開け連結させることで長さに対応する。最長で8mまで対応が可能になっている。

粉体塗装はハンドガンで行っており、塗装機はGema製(グラコ・ゲマ)をメインにパーカーエンジニアリング製、ホソカワミクロンワグナー製を使用している。

焼付乾燥炉は2台あり、大物塗装品用(8,000mm×2,600mm×3,000mm)と中物塗装品用(5,000mm×2,200mm×2,800mm)を揃えている。

3種の前処理設備を完備

防錆性や密着性を付与する前処理工程は塗膜性能に影響を及ぼすほどに重要であり、大物品の粉体塗装を得意とする同社ではワークに合わせた前処理を施している。

3年前、需要の高まりからディッピング式リン酸鉄皮膜処理設備(2,000mm×1,800mm×2,100mm)及び水切り乾燥炉を導入。従来のスチールグリッド処理だけでなく化成皮膜処理の体制を整えた。これにより、同社では薄い素材には化成皮膜処理、厚い素材にはスチールグリッド処理を前処理として施している。

また、珍しい前処理として噴霧式のリン酸鉄皮膜処理を行っている。高圧洗浄機を改造したもので、処理槽に入らない長尺・重量品の化成処理が行える。アメリカで使用される食品機械を塗装する際、安全基準の『FDA』規格を満たす必要があり、化成皮膜処理が必須であった。処理槽には入らないため、「アメリカでのやり方を参考にして高圧洗浄機メーカーに依頼し化成処理装置に改造してもらった」という。

なお、このFDA規格の粉体塗装はエポキシ樹脂系粉体塗料を2コートしており、膜厚は280~300μmを確保する仕様になっている。

第2工場を立ち上げ
塗装ブース3基、更なる増設も

第1工場横に流れる川を挟んだすぐ隣に第2工場を新設、5月から工場の稼働をスタートさせた。工場の敷地面積は4,800㎡、建屋は1,200㎡と広いスペースを確保している。

新工場の立ち上げを決めた理由について新川社長は「(第1)工場の稼働率が100%になっていた。余力がなければ新しい仕事を取ろうと思わなくなり、成長がなくなる。理想は75~80%の稼働率」と生産能力を上げることで成長余力を持たせる狙いがあった。これまでも設備投資による仕事確保を繰り返し成長してきた歴史を持つ。

同社のメイン顧客を始めとして工作機械では溶剤系から粉体塗装への切り替えが進んでおり、引き合いも増えている。粉体需要の増加を見込んで今回の大型設備投資に踏み切った。

第2工場は第1工場と同じサイズ(3,000mm×3,000mm×3,000mm)の粉体塗装ブースを3基導入、こちらも大物品を想定し間仕切り開閉式の連結可能な設計としている。

工場の中央に配置した焼付乾燥炉は300℃まで上がる設計。ダンパー(熱風吹き出し口)を下部に配置するなど炉内温度の安定性の精度を高めており、「上部、中部、下部での温度差はゼロ」の状態を維持する設計。乾燥が不十分な"焼きあま"やオーバーベークといった不具合を防ぐ。

天井に配備しているクレーンは2.5トン/丁の重量物を運べる。2丁吊りが可能であり、その場合は6トンまで搬送することができる。

工場内のスペースは余っており、必要に合わせて随時設備を導入できる余裕を持たせている。工場敷地に関しても、同様に空きスペースは十分。新たな建物増築も可能であり「化成処理ラインの想定もある」など需要動向を見据えた上で設備投資を行う方針。

管理とサービス力が付加価値に

同社は粉体塗装、その中でも大物品でのノウハウには自信を持っている。専門性を持たせた工場設備と同時に管理技術も蓄積された強みを持つ。膜厚管理、塗料選定、前処理の適正化、焼付温度管理、ゴミブツ対策などを細かく数値管理し資料を作成、要望があれば顧客に提出する。「社外に出る塗装品に関してはクレームゼロを徹底している」と新川社長。

付加価値にはこうした管理とともにサービス姿勢が大切との見方。例えば「一般的に工作機械のスプラッシュガード(切削時の切りくずの飛び散りを防ぐもの)は外面に対して内面の塗装は見えないことなどから雑になりやすい。でも切削強度によっては痛みが進みやすい」として、内面膜厚を仕様設計60~80μmのところ摩耗性を高めて100μmで塗装する。

当然、使用する粉体塗料は余分に増えるが、それを考慮しても自発的サービスが顧客の信頼性につながるとの考えだ。

新工場を稼働させたことで現状の稼働率は「70%程度」に"修正"できたという。生産キャパに余裕が出たため新たな仕事の確保を図っていく意向で、今後は建材や橋梁など建築分野をターゲットとしている。

新工場の立ち上げに際し正社員3名を増やし従業員数は19名の体制。ベトナム人研修生も新しく採用しており、年内には3名になる予定。これまで外国人研修生は雇用していなかったが、「とても勤勉なことが分かった。今まではオールジャパンにこだわっていたが、国籍は関係ない」として外国人研修生の積極採用も視野に入れる。

新川社長は「人材育成はとても重要。社内の世代交代も進んでおり、粉体塗装の技術や現場ノウハウの継承に引き続き注力していくつもり。粉体塗装需要はこれからも拡大していく。小ロット多品種の柔軟な対応力を強みにしていく」として事業拡大を目指す。