モルタル造形の塗装パネル開発
塗装の表現力格段に高める

意匠性に優れた新たな塗装用パネルを、岩手県盛岡市の建築塗装会社・五日市塗装工業(社長・晴山祐一氏)が開発した。レンガや岩肌、木目などの立体的な形状を発泡ポリスチレン(スタイロフォーム)に簡便に転写できる工法を開発、塗装との組み合わせによってモルタル造形(デザインコンクリート)の世界観を手軽に再現できる。塗装の強みである"表現力"を助長する塗装用パネルとして商品化する。


近年、モルタル造形と呼ばれる仕上げ工法が人気を博している。古びたレンガ積みの壁、ゴツゴツとした岩肌、風化した板壁の荒々しさなどの特殊な意匠をモルタルによる造形と擬似塗装で表現する仕上げ工法。テーマパークや商業施設などで広がった特殊意匠工法だが、住空間の個性化や高意匠ニーズを受け最近は住宅建築やリフォームにもニーズが広がっている。

ただし、専用のモルタル(主に輸入品)や型(スタンプ)などの特殊なツール、更には高度な施工スキルを要するため価格も高額で、一般的な仕上げ工法としての普及には限界がある。

今回同社が開発した塗装用高意匠パネルは、レンガや石割、木目などモルタル造形のような立体形状の塗装下地を一般的に入手できるスタイロフォームで再現するもの。

作成手順はこうだ。

厚さ20mmのスタイロフォームの表面に①同社レシピによる特殊液剤をローラーで塗布②液剤を塗布した面を特殊モルタル用のシリコンゴム製のスタンプで型押し(各種の柄、模様)③スタンプをめくる―の3工程だけ。時間にしてわずか数分の作業だ。

特殊液剤によって表面が軟化したスタイロフォームにスタンプの凹凸が転写され、レンガや石の表面のように立体加工される。立体形状は固定化し、元に戻ることはない。晴山氏が「試行錯誤した」という、スタイロフォームを適度に軟化させる特殊液剤が開発のポイント。「パネル自体に微妙な凹凸が転写されているので、陰影のある塗装がしやすく石やレンガなどのリアルな素材感を表現でき、奥行きのある塗装が楽しめる。軽量で両面テープでの着脱もできるので、新たなインテリア商材やDIY商材として面白い」(晴山氏)とし、市場に投げかけてみる意向だ。

まだきちんとした商品イメージは固まっていないが、30センチ角ほどのパネル形状とし白の水性塗料の下塗りまで施して出荷するイメージ。「購入した方が自由に塗装をしていただき、オブジェのように壁や室内に飾ってもいいし、ウエルカムボードのような使い方もできる。世界に1枚、自分だけのおしゃれなインテリアボードとして商品化したい」とし、販路開拓などで他企業とのコラボも視野に入れる。

デザインで塗装の価値高める

同品の開発アイデアは、日本塗装工業会が7~8年前に行っていたモールディング講習会が発端。発泡スチロールを形状加工して窓まわりなどの装飾パーツに仕立てる講習で、「発泡スチロールのような身近な素材を応用するところに魅せられた」(晴山氏)という。

一方で、モルタル造形の人気が市場で高まっていることを受け、「高度なテクニックを要するモルタル造形を発泡スチロールのような素材で簡便に再現できないか」と着想、さまざまな素材や加工法を試し、約1年がかりでモルタル造形スタイルを再現した高意匠塗装パネルの開発に成功した。

開発の動機について晴山氏は、「住宅の塗り替え(屋根、壁)を主力事業とする中で、以前から内装に食い込みたいとの思いがあった。冬場の仕事の創出や天候に左右されない仕事の平準化、そして内装ならではのペイントテクニックやデザインセンスなど自社をもう一段高める潜在力を感じていたから。ただ、そこで存在感を得るためには"インパクト"の必要性を常々感じていた。インパクトのある意匠表現を手探りしている中で、今回の造形塗装パネルの開発にたどりついた」と説明する。

同社では新たなインテリア商材として造形塗装パネルの商品化を探る一方で、住宅塗装を中心とした自社の施工でも活用していく。「立体的なパネルとの組み合わせで塗装の表現力は一段と高まります。玄関まわりや窓のモールディングなど住宅塗装のアクセントとして提供し、当社にしかできない工法としてお客様満足と塗装工事の付加価値アップを狙っていきたい」と具体的な動きに入っていく。



晴山祐一社長
晴山祐一社長
特殊液剤をローラーで塗布
特殊液剤をローラーで塗布
スタンプで型押し
スタンプで型押し
スタンプをめくる
スタンプをめくる
凹凸が転写される
凹凸が転写される
モルタル造形を再現
モルタル造形を再現

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