製造工場のIoT化加速
塗装現場の標準化とデータ化へ

製造業でIoT(Internet of Things)の広がりが加速している。あらゆるものをインターネットでつなぐIoT化の対象は1つの工場にとどまらず、国内外の関連工場、更にはサプライチェーンを包含することで、生産効率性の向上を図っている。海外生産が一般化する中、グローバル規模での生産工程のデジタル化を急ピッチで進めている。ものづくりの最終仕上げである塗装工程においても、今後IoT対応が求められていることが予想される。そのためには工業塗装現場の標準化、データ管理の徹底に取り組む必要がある。


製造業がIoT化を進める背景には国内外の多拠点で製造する上での生産効率及び品質確保があるが、近年の動きとして特徴的なのがビジネスモデルの変化だ。従来のように高性能製品を開発すれば右肩上がりで売上が推移する時代ではなく、アフターフォローまでをサービスするビジネスモデルが要求されている。

例えば、工作機械であれば稼働状況の情報を集めて異常検知や補給部品のジャストタイムを明示するなどしてメンテナンス性を高める。更には収集した情報から新製品やシステム開発へとつなげる。製品を開発し販売することで完結したビジネスモデルから新たな価値付与を目指している。

加えて、製造ラインの在り方が問われていることもある。大量生産方式が主流でなくなり、市場ニーズはマスカスタマイゼーションへと移行している。

顧客ニーズが多岐にわたるため、製造ラインでも柔軟性や段取り力を持つ最適化が生産性向上につながる。マス(大量生産)と同時にカスタム(受注生産)を可能としなければならず、そこでは人や機械・装置、システムをインターネットでつなぐIoT、更にはAIが効果的となる。

IoT化は大手企業に限らない

1月17日から19日の3日間、東京ビッグサイトで「第2回スマート工場EXPO」が開催された。出展企業は前回の2倍となる175社に増え、3日間で1万3,000人が訪れるなど製造業のIoT、AIの関心の高まりがうかがえる。

会場で開催された関連の基調講演の中では、"現場の標準化"がキーワードに挙がる。

「デジタルは加速させるためのツール。すべては標準化があってこそ」(GEヘルスケア・ジャパン)、「(加工や切削など)直接業務は自動化、(会議や文書作成など)間接業務は見える化、標準化することが大切」(コニカミノルタ)といった具合に作業工程の標準化を徹底した上でデータ管理することから始まるとの見方だ。

つまり、流れとしては現場作業を標準化してデータを収集、正規化する。そのデータをもとに生産工程及び工場を"見える化"する。"見える化"することで分析や予測がしやすくなり、生産の自動化を可能とするというもの。

これは何も大手製造工場に限ったことではなく、メーカー系内製ラインや専業者など工業塗装の現場にも当てはまる。

最適な塗装条件を標準化しデータ管理することが必要となる。使用する塗料の種類やメーカーごとの特徴、塗装機のガンスピードや吐出量、パターンエアー圧に加えて、気候とそれに合わせた希釈溶剤条件など。塗装工程だけでなく前処理や焼付乾燥などの前後工程、更にライン搬送と連動したデータを蓄積することで精密性が増す。

人手不足・技術継承の解決策

しかし、塗装はワークごとに条件設定が多種多様であるがゆえに標準化、データ管理が難しいとされている。塗装機メーカーの中にはIoTに対応したシステムを開発しているが、やはり塗装会社自らが取り組まなければ実現しない。

塗装工程だけでなくワークを吊るハンガーでも、各社は効率的な組み方があるはずだ。こうしたこれまでの経験からくるノウハウとして身に付けたものをデータ化することで、次世代に向けた適応力及び競争力を身に付けることができる。

データを管理し現場を見える化することができれば、生産性の向上、不良原因の分析、顧客との生産計画の最適化などの効果が期待できる。

上述したように、工業塗装業から見ると顧客となる製造業は"内外"でIoT化を急速に進めており、受注業態である工業塗装側にも対応が求められてくることが予想される。

加えて、現状で課題となっている人手不足はますます深刻化し、技術継承の観点からも同様な課題を抱えている中で、塗装工場での自動化を広く進めることができれば大幅な課題解決につながる。

塗装のIoT化が広がれば、1工場だけでなく遠隔地の塗装工場との連携も可能となり、塗装専業者同士でのネットワーク化にもつながる。次世代に向けた工業塗装の在り方としてIoT技術の活用が期待される。



1月に開催された「第2回スマート工場EXPO」には最新の製造業IoT・AIが多数紹介された。
1月に開催された「第2回スマート工場EXPO」には最新の製造業IoT・AIが多数紹介された。

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