塗料ディーラーの南海プランナー(本社・徳島県徳島市、社長・笠井泰宏氏)は今年6月、同社テクニカルセンターに焼付熱風乾燥炉を導入した。同センターは、実技塗装研修と座学講習を兼ねた施設で2018年にリニューアル。同社が主力とする鈑金・塗装ユーザーの研修施設として塗装ブースを既に配備しており、今回乾燥炉の導入により工業用塗装分野の展開に弾みをつけたいとの狙いがある。中でも粉体塗装の導入提案を積極化する方針だ。
8月26日、27日、お披露目会を兼ねた講習会を開催。県内に生産拠点を持つ建材メーカー及び協力会社約20名を招き、粉体塗料と溶剤アクリル焼付塗料を使った塗装実演を行った。
今回導入したのは、栗田工業のガス式焼付熱風乾燥炉「サハラ」。
8万kcal/h×2、4万kcal/h×1の3つのバーナーによる総熱量20万kcal/hを有するバッチ式乾燥炉で炉内雰囲気温度60℃から最大200℃まで加温できるのが特長。樹脂塗装から粉体塗装まで幅広い部材と塗装系に適応する。170℃まで約5分で到達でき、4つの吹出口によりワークに応じた適切な乾燥環境を調整できるのも特長。乾燥炉のサイズは高さ3.5m、幅3m、奥行き3.5m。塗装ブースと研修室との間に設置した。
講習会では、26日に粉体塗料、27日に環境配慮型アクリル樹脂焼付塗料による実演塗装を行い、粉体塗料は久保孝ペイントの「ニッシンパウダー」、アクリル樹脂焼付塗料はナトコの「アクリストHi」を使用。粉体塗装機は、旭サナックの静電粉体ハンドガンユニット「EcoDual」を導入した。
本紙が訪ねたのは、低温焼付塗装を実施した27日だったが、120℃×20分の低温焼付塗料の仕上がりに参加者は興味津々。玄関ドアを模したミニチュア建材の出来栄えを丹念に確認する姿があった。
ナトコの担当者は、メラミン焼付からアクリル焼付に移管が進む現状を指摘した上で「低温化によるコスト、CO2が削減できるメリットは大きい」と特化則にも対応する低温焼付塗料の特長を伝えた。
受託も視野、自補修のノウハウ生かす
同社のような塗料ディーラーが自社施設に焼付乾燥炉を設置する事例は極めて珍しい。狙いは、工業塗装分野の拡充だ。
昨年末に創業50周年を迎えた同社は、元々建築系塗料販売店としてスタートしたが、現在は自動車補修用を筆頭に建築、重防食、船舶、木工と取り扱う塗料分野は多岐にわたる。
同社が基盤とする徳島県は人口約70万人、県内名目GDPの全国シェアも0.5%台と経済規模は小さい。「限られた地域で生きるためには、何でもやるしかなかった」と笠井社長。創業以来、塗料販売で得た顧客との関係を生かし、改修工事、設備工事、IT支援、環境改善支援、DIYショップ、食品(弁当販売)へ業容を拡充。また2021年には広島の同業・コーエイをグループ化するなど、塗料総合商社としての成長像をビジョンに事業規模を拡大させてきた。直近のグループ売上高は約25億円に上る。
今回の乾燥炉導入は、そうした業容拡充の一環。現在、工業用塗装分野を成長領域に据え、四国、岡山、山口に顧客を広げており「VOC削減やメンテナンス性の良さ、塗料再利用ができる粉体塗装のメリットを体感してもらうためには、塗装だけでなく仕上がりも見てもらう必要があった」(笠井社長)と乾燥炉の導入を決断。メーカーのラボ拠点から遠い中・四国の地域性も逆手に取り、ラボ施設の充実化によって顧客との関係構築を深めたいとの狙いがある。今後、粉体塗装に限らず焼付塗装に関心のある顧客のテスト依頼に対応していく方針だ。
一方、顧客では対応が難しい特注品や特別色の受託塗装も視野に入れている。自補修で培ったノウハウが工業塗装分野に応用できるとの目線がある。
同センターには、外から給気し、フィルターを通じて排気するプッシュ・プル型塗装ブース(栗田工業製)を導入しており、焼付乾燥炉との併用によりクリーン環境による高品質塗装ができると訴求する。密閉式ブースの導入を付加価値策として顧客に提案する傍ら、受託塗装で顧客対応力を高める考えだ。
笠井社長は「これからVOC削減、脱炭素化と塗装工場の環境対応に一層拍車がかかると見ている。粉体塗料、低温硬化塗料を含め、塗装工場の環境負荷低減をサポートしていきたい」と意欲を示した。





