ヤマダインフラテクノス(本社:愛知県東海市、代表取締役:山田博文氏)の業績が好調に推移している。塗装工事に加えて循環式ブラスト工事の需要が旺盛であり、今後の更なる事業拡大に向けて新たな局面に入っていく。

鋼構造物におけるPCB含有塗膜の処理が進んでいることなどから、塗装工事発注量が多くなってくる中で「一番の問題が人材」と山田社長。「発注量に対して現場管理者が足りないのが実状」と述べる。人材不足は現場管理者だけでなく、現場作業者についても同じだ。

同社ではベトナム人の技能実習生の受け入れを行っており、現在は技能実習生と特定技能生を合わせて60名以上が働く。現状その割合は半々であり、基本的には技能実習から特定技能へと移行する流れとなっている。

その中で進めているのがベトナム人の働く環境の整備。「彼らの活躍、そのためのサポートを手厚くして、やりがいのある現場作り、会社作りに取り組んでいる」(山田社長)としていくつかの施策を進める。

ベトナム技能実習生の受け入れ前には、山田社長が代表理事を務める日本鋼構造物循環式ブラスト技術協会が運営するベトナム・ハノイ市にある技術訓練学校で学ぶ。この学校では座学に加えて、実際に循環式ブラスト施工を行うことで技術習得を行っている。

そのため、日本に来たときには雑用に終始することはなく、早い段階で循環式ブラスト施工を行う。「"花形の仕事"である循環式ブラスト施工ができることは彼らにとってもやりがいにつながっている」として、スムーズな技能の習得と実務の仕組みを構築する。

同社では約10年前から技能実習生の受け入れを行っているが、当初は学校がなかったため、来日してから1から教えることになるため技術習得が難しく、雑務に時間を費やすことも少なくなかったという。

今は技術訓練学校で循環式ブラスト施工や塗装作業、安全教育について半年間教えているため、即戦力で働ける環境が整っている。技能実習、更には特定技能を終えた後には技術訓練学校で教える立場にもなるケースが増えているという。

ベトナム⇔日本の企業内転勤
新たな施策として、ヤマダインフラテクノスとして、6月にベトナム・ハイフォン市に現地法人を設立。ハイフォン市は海に近く、そこでは造船のブラスト施工などの事業を行っている。

日本でブラスト技術を習得したベトナムの特定技能生などが、帰国後に技術を生かせる職場となる。また、グループ会社のため、ベトナム法人から日本のヤマダインフラテクノスへと企業内転勤として半年間日本で働くことも可能となる。日本の人材不足の対策としての好循環を生み出していく考えだ。

ハイフォン市の現地法人は駐在の日本人を含めて10人規模の会社。造船のブラスト需要への展開に加えて、日本人作業者の確保が難しくなっている中で人材力としても重要な役割を担うことになる。

一方、国内でもよりよく働くための環境作りに取り組んでいる。先般、40部屋ある企業の寮を買い取りリフォームを行った。部屋はすべて個室で快適な生活空間を提供する。現場は全国各地であるため出張が多く、北は北海道、南は九州、四国などにも行く。体力的にも生活環境の整備が重要となる。

ショットピーニング普及へ
また事業面を見ると、循環式ブラスト施工に加えて注力しているのが、鋼橋の疲労き裂予防保全であるショットピーニングの展開だ。

無数のピーニング用の特殊鋼球(ショット)を高速度で鋼材表面に叩きつけ、表面近傍だけを塑性変形させることで、表面層に圧縮残留応力を与え、疲労き裂や応力腐食割れなどに対する抵抗力の向上を図る技術のこと。

ジェットエンジンや翼、ランディングギヤなどの航空機関連などに古くから利用される技術を鋼構造物向けに展開している。塗替塗装時に、「循環式ブラスト工法」のシステムとブラスト用足場及び防護設備を有効活用し、ブラスト用金属系研削材をショットに置き換えることで、既設鋼橋でのショットピーニングを可能とした。

これまで高速道路会社での採用実績があり、国交省管轄の橋梁ではデータ検証を行うなど、今後の更なる展開を目指している。このほど、アメリカの土木学会にて論文発表を行うなど、学術的にも鋼材の疲労強度の向上を示して普及を図っていく。

ヤマダインフラテクノスは人材確保及び育成の仕組みを構築することで体制強化を図るとともに、事業領域の拡大を図って更なる成長を目指している。