外観検査AIで自動化、検査品質の向上に

工業塗装専業者のヒバラコーポレーション(本社工場:茨城県那珂郡東海村、代表取締役社長:小田倉久視氏)は塗装外観検査の自動化や精度向上に寄与する「AI表面検査システム」を開発し、市場展開に向けて最終段階に入った。人手不足が深刻化する中で、その解消策、更には検査品質における革新的技術の普及を目指している。来春の上市を予定している。

 


同社は9月17日(水)から19日(金)まで千葉・幕張メッセで開催された 「スマート工場EXPO」にて、AIとロボット技術を融合した次世代の表面自動検査システムを初披露した。出展したのはプロトタイプであり、小田倉社長は「今回出展して、このシステムに関心を持つ人たちの声を聞いて、製品化に向けて参考にしたい」と述べ、市場調査を踏まえて完成度を高める考えを示した。

「AI表面検査システム」は協働ロボットに搭載したラインスキャンカメラで被塗物を撮影し、AIにより画像から不具合を判定するシステム。塗装外観におけるブツ、傷、穴、糸ゴミ、へこみ、ピンホールを高精度に検出できる。

協働ロボットは移動式のため、作業する際には位置決めを行った上で被塗物の認識に移る。AIによって画像からブツや糸ゴミなどの不具合を判定するが、事前に不具合を学習させることで、そのデータをもとにAIが判定する。

判定後にはモニター上に不具合が表示されるが、判定基準は不具合の種類の他に、大きさにも設定が可能。最小値としては0.2ミリからは確実に判定できる性能を持つ。

実際の現場では0.2ミリのブツは人の目で判定するのは困難だが、「AI表面検査システム」では高精度に検出できる。検出するサイズは設定できるため、ユーザーの品質基準に合わせた検査が可能となる。

今回の出展では、サイズ40cm×20cmほどの被塗物の検出にかかる時間(撮影、画像読み込み、判定)は約5秒であった。ただ、今後処理スピードは向上させる予定という。AI判定が終わる前に検査システムは次の被塗物の検出作業に移行し、連続で作業する。

被塗物の形状は平板だけでなく、曲面においてもロボットが追従し検査は可能となる。色調や素材は選ばず幅広い現場での使用が想定される。

人手不足解消に期待

今回、「スマート工場EXPO」に出品した「AI表面検査システム」はプロトタイプで、開発には2年以上を要した。展示会に訪れた来場者の声を聞いた上で、最終的なアレンジを行い製品化する予定。販売展開については、ロボットアーム込みのワンストップ納品で短期間での導入が可能。また価格に関しては、ユーザーの要求性能によって仕様が異なり、対応幅を持たせることになる。本格的な市場展開は来年3~4月頃を想定している。

塗装工場に限ったことではないが、人手不足問題は深刻化しており、人材確保や熟練者の育成といった課題が山積している。

こうした状況において、「AI表面検査システム」によって塗装表面の検査作業の自動化ニーズは強くなっている。従来の目視検査から脱却し、熟練者も不要で安定した検査品質の確保が可能となる。疲労による見逃しといったヒューマンエラーの問題もなく、作業時間も基本的には制限がなくなる。

同社では塗装工場運営50年の経験を生かした"超現場視点"で工場のDX化支援を推進しており、クラウド型設備監視システムなどを展開、各地の工場での導入が進んでいる。今回の「AI表面検査システム」の開発で製品力の強化を図る。



「AI表面検査システム」
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