塗膜耐食性評価の事業性検証を実施

自動車メーカーのマツダは、自社で開発・実用化している金属塗装部品の防錆性能評価技術の事業性検証を開始する。一般的な評価法に対し、コンパクトな装置を使い数分~数十分で結果が出せ、橋梁や鉄塔などの建造物の現場評価も可能だ。11月12日~14日に幕張メッセで開催される第8回塗料・塗装設備展COATING JAPANに出展するなど、塗料・塗装業界への訴求を進めていく。

 


現在、一般的な金属塗装部品の防錆性の評価方法として、腐食促進試験がある。据付型の専用試験機を使い、評価サンプルへ数カ月に渡り高濃度塩水を連続噴霧し、実際よりも過酷な条件で腐食を早く進行させて評価する。錆の生成具合は評価者が目視で確認。

所望の結果が得られない場合は、部品と塗料の組み合わせや配合を変え、同様の工程を繰り返す。評価期間が長い、目視のため評価が定性的、専用試験機を設置できるスペースが必要といった課題があった。
マツダは、塗膜に着目した独自技術を開発し、こうした課題の解消を図っている。

短時間で定量評価、現場評価も

塗装金属の腐食メカニズムは、まず、塗膜に対し腐食因子の酸素や水、腐食促進物質の塩化物イオンを含む電解液が浸透。腐食因子が素地金属に到達すると、塗膜と金属の界面で微小な電池(局部電池)が形成され、これが電気的反応を起こすことで錆が生じる。この錆が膨張すると塗膜も膨張し、進行していくと塗膜の割れが発生する。

同社技術では、一連の腐食工程において、2種類の手法を用いて「電解液の塗膜の透過しにくさ」「膨張に対する塗膜の剥がれにくさ」を評価している。これらは、自動車業界の錆評価法と相関があることを確認済み。また、どちらも、サイズ350×260×100mmのコンパクトな測定器(写真)で実施可能。

同社の担当者は「数分~数十分間で定量的な結果が得られる。また、測定器の持ち運びができるため、実際の建築物などへの屋外での評価試験が可能」と従来技術との違いを説明。

評価対象となる塗膜の種類については「これまでの社内の検討では、液体塗料と粉体塗料に使えることを確認している。現状、適用できない樹脂種もないと考えられる。対象外になりそうなものを強いて挙げるならば、数マイクロレベルの薄膜」と述べた。

塗料・塗装部品メーカー想定

同社では、塗膜耐食性評価サービスの提案先として、塗料メーカーや自動車を含めた塗装部品メーカーなどを想定。3つの課題に対する貢献を打ち出している。

1つ目は、塗料開発や塗料選定に要する期間の短縮。こうした検討では、顔料や添加剤といった原料の配合割合、素地金属の組成など、膨大な数の組み合わせパターンがあり得る。このため、通常は過去の知見から良い結果が出ると考えられる候補から評価が行われる。この際、目標性能を満たす設計がなかなか見出せず、開発が年単位の長期に及んでしまうケースがある。

「当社技術では短時間で実際のサンプル評価ができるので、耐食性能が良好な組み合わせを抽出するスクリーニング工程が加えられる。有力候補のみに対して腐食促進試験を行えば手戻りを回避できる」(マツダの担当者)。

2つ目は、塗装製品の製造工程における塗膜品質管理の高度化。
従来の塗装製品の塗膜品質管理方法は「作業標準化や設備管理など、工程全体で代替管理している場合が多い。これは、既存評価方法では時間がかかるため。ごく短時間で評価できれば、例えばロットごとに抜取検査を導入するといった高度化が可能となる」。

3つ目は、橋梁や鉄塔といった建造物の保全最適化や高寿命化。
現状、こうした建造物では、目視やドローンで赤錆発生を確認後に対策を行う事後保全が多い。この場合、保全作業を行うたびにベース金属の薄肉化が進むため基礎力が低下してしまう。一方、一定期間ごとに行う時間基準保全のケースでは余裕をもって保全を行うため運用コストの増大につながる。

この課題に対し「現場評価できるため、塗膜の劣化状況に応じた状況基準保全が可能となる。保全の回数やタイミングの最適化で、ベース金属の減肉防止やコスト削減につなげられる」と説明した。

今年3月から、一部の企業と有償トライアルを実施している。送付された塗膜サンプルの測定を行ってレポートを提出する受託型サービスで、当面はこの方式で市場ニーズを探る。具体的なレポートの内容については「例えば塗料開発であれば、サンプルごとの性能比較が考えられる。また、建造物の保全関係の場合は、塗膜の防錆性能がどのぐらい残存しているかをまとめるといった内容が求められると想定している」と話していた。



測定器の外観
測定器の外観
ハンディな装置なので現地測定が可能
ハンディな装置なので現地測定が可能

HOMENew Trend塗膜耐食性評価の事業性検証を実施

ページの先頭へもどる