壁紙を張った職人が、塗装仕上げまで行う。そんなマルチな職人が活躍している施工会社がある。ドイツ発祥の塗装用下地壁紙「ルナファーザー」の専門施工業者、ルナファーザー・テクノ(東京都練馬区、北川潤社長=写真)だ。「壁紙+塗装」といったユニークな施工スタイルをセールスポイントにしている同社。その強みや可能性に迫った。
塗装用下地壁紙「ルナファーザー」は、塗装のための下地壁紙。石膏ボードなど壁や天井の基材に同品を張り、その上に塗装をして内装を仕上げる。
ドイツのエアフルト社が製造元で、200年近い歴史を持つ伝統的な内装材。世界30カ国以上に輸出され、同品を張って塗装で仕上げる工法はヨーロッパではポピュラーに親しまれている。国内でも日本ルナファーザー(東京都港区)が輸入販売元となり、30年以上の実績を重ねている。住宅、商業建築、公共施設など幅広いシーンに広がる塗装用下地壁紙の代表的な存在だ。
特に近年、住宅の内装仕上げのニーズが多様化する中で、塗装が選ばれるケースが増加。その際、仕上がりの良さやクラックを抑える期待から「ルナファーザー+塗装」をスペックするハウスメーカーや工務店も増えており、独自のポジションを築いている。
そのルナファーザーの施工を専門に行っているのがルナファーザー・テクノだ。8年前、後継者問題を抱えていた同社を、内装材全般の施工販売を行っている日本NTR(東京都練馬区)がグループ化して事業を承継、日本NTRの北川潤社長がルナファーザー・テクノの社長を兼務し、今に至っている。
北川氏は内装仕上げとしてのルナファーザーの魅力について、「天然の紙からできたルナファーザーは表面がわずかに毛羽立っており、そのテクスチャーが塗装仕上げに反映。優しくて柔らかくて清々しい、独特の空気感で部屋を包み込む」と説明。「ビニールクロスなど内装仕上げの施工に長く携わっているからこそ、その違いが明確に分かる」と答える。
ルナファーザーは、再生紙や木材チップなど100%天然素材でできた内装材。通気性と透湿性に優れ、結露やカビの発生を抑えたクリーンな室内環境をつくる上、「壁紙自体の素材感が塗装と合わさることでソフトな質感を醸し出し、このスペックならではの上質な空間を形成。紙自体の多彩なテクスチャーと塗料の色のバリエーションでデザインの幅も無限に広がる」と意匠性の高さも強調。「このインテリアを経験した人は、他の内装材に移れない」と胸を張る。
現在、自然派住宅などこだわりのビルダーやリフォーム会社を多く顧客に抱え、リピートオーダーを中心に月に15~20件をコンスタントに受注。中には、新築時にルナファーザーを採用した一般の個人から『リフォームに際してルナファーザーで張り替えてほしい』と直接依頼されることもしばしばだと言う。「この仕上を経験した人は離れられない」と北川氏が言うように、人を惹きつける魅力があるようだ。
"カッコいい職人"像をアピール
同社の施工で興味深いのが、壁紙(ルナファーザー)を張る職人が塗装まで行うという多能工の活躍だ。「ルナファーザー・テクノが設立した当初から働いてくれている職人さんたちで、いずれも20~30年のキャリアを持つベテラン。張りと塗りの両方の作業を当たり前のようにこなしてくれており、希少な戦力」と北川氏。
ルナファーザーは通常のビニールクロスより紙自体が薄いため、精度の高いパテ処理が求められ、塗装仕上げならではのシームレスさを出すために壁紙のジョイントにも気をつかう。ただ、塗装下地用に造られているだけあって、「塗料の転写性がよく、ムラにもなりくいので、塗装作業自体はスムーズに進む」とのことだ。
「壁紙を張る職人がそのまま塗装に移行するので工程間の手待ちや工程調整の煩雑さがなく、効率的に作業を行える。そして、後工程の塗装のことを考えて壁紙を張る作業を行うので、壁紙と塗装の分業では出せない仕上がりの良さが出せていると思う。そこが当社の施工の強みであり、セールスポイント」と自信を示す。
一方で、北川氏が懸念しているのが職人の高齢化の問題だ。「いずれの職人さんもベテランで高齢に達しており、そう遠くない時期に引退の頃合いを迎えると思う。壁紙と塗装をマルチに行えるのが当社の強みでもあるので、そのスタイルの継承を急がなければならない」と課題を口にする。
「人口減少や価値観の多様化など社会が変わる中で、建築の世界も従来の構図が崩れつつある。力ある者が支配する下請構造から、現場で実際に手を動かして働く人が一番強い時代へ。"職人"という仕事にスポットが当たる時代背景とともに、マルチな技能を持つ"カッコいい職人"というスタイルを打ち出し、若い人たちにアピールしていきたい」と人材の獲得に意欲を示す。"張りと塗り"の技に長けた、スペシャリスト集団を目指す意向だ。
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