高機能アクリルの自動車部品開発
塗料メーカーとの連携も

総合化学メーカーの住友化学は、高機能アクリル樹脂を用いた自動車部品の金属代替技術の開発を進めている。耐候性や強度に優れる他、成形のしやすさによる製造プロセスの簡便化、モノマテリアル化でのリサイクル性向上、光波長透過特性やセンサーとの相性を生かした機能付与、塗装レスによるCO2排出量削減などを打ち出せる。部品の意匠性を左右する樹脂の着色剤については複数の塗料メーカーと検討を進めている。開発の進捗に自動車メーカーも関心を寄せており、今後も技術のブラッシュアップを進めていく方針だ。


住友化学は、独自技術で物性を強化した高機能アクリル樹脂の新規需要開拓に取り組んでおり、自動車分野を有力市場の1つと捉えている。具体的な用途が自動車外装部品で、軽量化はもとより金属から樹脂への代替による新たな価値の付与を目指している。

「アクリル樹脂は表面が傷付きやすく耐衝撃性も高くないので、通常は自動車の金属代替に向いていない。しかし当社の場合、樹脂設計の工夫で耐傷付き性や強靭性の付与でアクリルの弱点を克服できる。これにより耐候性や易成形性、高リサイクル性といったアクリルが優れている点を生かしたソリューションを提案できる」と同社MMA事業部の山崎和広氏は強調する。

具体的には、耐傷付き性を付与したアクリルと、強靭性を付与したアクリルとを組み合わせることで、傷が付きにくく強靭で、かつアクリルのみからなる「モノマテリアル」の部品が実現できる。「例えばボンネットのような比較的大きなサイズの部品の場合、アルミと同等の重量と強度が実現できる見込み。また簡便なプロセスで成形でき、更にモノマテリアルなのでリサイクルの際に異素材の分離プロセスが必要ない」と複合的なメリットが生まれることを強調する。

部品の着色は樹脂へ着色剤を混錬する内部着色で行う。現在、この着色剤について、自動車の外装向け塗料で実績のある複数の塗料メーカーと検討を進めている。

ボンネットのモックアップ展示

住友化学は、今年1月の自動車技術の展示会「オートモーティブワールド」にて、今回の開発技術の最新成果として約4分の1サイズのミニチュアボンネットのモックアップを展示した。

成形技術については、自動車部品メーカーで試作車製作などの実績も豊富な浅野(群馬県伊勢崎市、社長・浅野圭祐氏)が協力。意匠性と強靭性を有するアクリルシートに対し、浅野の成形技術によってボンネット形状及び表面の造形を形成した。

今回は展示用サンプルとして、意匠性、強靭性、耐傷付き性を複合したモックアップを展示。実用では強靭性と耐傷付き性が必要だが、モックアップではさまざまな組み合わせの可能性を示した。

展示ブースでは、深絞りや凹凸パターン、艶とマットの同時表現といった、従来のボンネットにはない造形が自動車メーカーなどから注目されたという。また、光を活用した意匠にも関心が集まった。一見赤色に見えるアクリルシートは特殊な着色剤を用いて光を透過するように設計しており、内側に光源を置いて光を当てたときにだけ、内部に設置したデザインを外側に浮かび上がらせられる。「この意匠は金属では難しい」と山崎氏は胸を張る。

「来場者からは『今までにない面白い車につながる技術』との評価があった。また複数の自動車メーカーから『今後も開発成果をウォッチしたい』との声がけがあり、アプローチを継続していく」と今後の方向性を示した。

塗装とは異なる表現を

山崎氏は「塗装代替ではなく、塗装とは異なる色の表現を創造したい」として塗料メーカーとの連携を重要視している。また、協力する塗料メーカーの1社は、同社との連携について「環境への配慮や製造工程の効率化が加速する中で、私たちは『塗料を塗る』という枠組みに捉われない、新しい表面の在り方を模索しています。その1つとして取り組んでいるのが、無塗装での加飾や機能付与の提案です。これは単に塗装の代わりを目指すものではなく、私たちがこれまで塗料開発で培ってきた知見を生かし、プラスチック素材そのものの表面をより豊かに、より機能的に進化させていこうとする試みです。従来の『外側から色を重ねる』手法だけでなく、素材と向き合いながら製品表面の価値を高めていく。そうした柔軟なアプローチを通じて、これからのモノづくりや持続可能な社会に少しでも貢献できればと考えています」とコメントしており、市場要求に対し自社技術をアップデートして積極的に対応する方向性を打ち出している。



オートモーティブワールドの展示品
オートモーティブワールドの展示品
光の透過を生かした意匠
光の透過を生かした意匠

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