焼付塗装を中心に建機や看板、機械部品などの工業塗装を手掛けるムラカワ(広島県広島市、社長・村川琢也氏)は、自社開発のAI検査装置「デジタルドットゲージ」を塗装ゴミブツ検査の出荷OK/NG判定のサポートに活用している。同社での運用で有効性が確認されたことから、同社からスピンオフしたアインソリューションズ(社長・松本優氏、ムラカワ新規事業部兼任)が販売総代理店となり、この装置の塗装市場への普及を推進している。
1968年に自動車塗装業で創業したムラカワは、事業の進展に伴い工業塗装へと徐々に軸足を移し、現在は県内の5つの工場で鋼製建具、看板、機械部品、舶用部品など多彩な品目の焼付塗装を手掛けている。
2009年に2代目社長に就任した村川氏(写真)は、トヨタ生産方式を社内に浸透させ効率的な生産体制を構築するなどの社内改革を推進していった。また、2021年に県立広島大学大学院のビジネススクールで経営修士(専門職)を取得。「塗装技術の標準化と企業価値向上」を研究テーマとし、その成果の自社への適用に努めてきた。
村川氏の舵取りを通じ、同社では業務上のさまざまな事柄を定量化する意識が根付いていったが、ゴミブツ検査は定性的な作業を脱却できず悩みのタネとなっていた。「欠点流出防止を意識するあまり過剰に厳しい検査が常態化し、現場で出荷OK/NGの判定を下すのが難しくなった。結局、工場長の判断が逐一必要となり、検査に掛かり切りになっていた」と村川氏は振り返る。
こうした状況を改善するために生まれたのが「デジタルドットゲージ」で、工場での外観検査分野で実績のあるAIベンチャーと協力して開発。昨年から現場運用を始めた。「クライアントから出荷基準となるゴミブツのサイズが数値で示されているものの、実際には人の目視検査では判断に迷うケースが少なくない。デジタル技術で対象のサイズを数値化できれば、基準と対照して定量的に判定できるようになると考えた」とコンセプトを説明する。
デジタルドットゲージは、ゴミブツを接写するためのカメラ内蔵プローブと撮影した画像を映すモニターで構成。検査員がゴミブツを撮影すると、1mm角の格子状の指標が示されたモニターに撮影したゴミブツが映し出され、サイズが数値で示される。画像内のゴミブツ形状を正確に認識するためにAI技術が使われている。
実際の工場での運用では、目視ではOK/NG判定が難しい欠点候補がある製品が見つかると、その近くに付箋を貼って1カ所に集めておく。これらに対し検査員が「デジタルドットゲージ」でまとめて確認し、OKであれば出荷し、NGであれば修正を行う流れとなっている。
実際の欠点候補とデジタルドットゲージでの撮影結果は図1を参照。白い金属部品の表面にある黒点がモニター画面に色付きで示される。右上の1.31mm|0.21mm2は欠点候補の長さと面積を示している。検査員はこの数値を検査基準と照らし合わせてOK/NG判定できるというわけだ。
2025年11月から、ムラカワからスピンオフしたアインソリューションズが「デジタルドットゲージ」の塗装業界に向けた普及活動を行っている。展示会や業界団体でのPRを積極的に進めており「検査の実演を行うと大きな反響があり、手応えを感じている」と松本氏。また、大塚刷毛製造、サンコウ電子研究所、中島商会といった商社を通じた展開も開始した。
AIでOK/NG判定しないことに対して疑問を寄せられることが多いという。これに対し「AIで判定するには、ユーザーの現場で生じる欠点の画像をAIに学習させる必要が生じ、高精度化できるかもケースバイケース。人の判断をサポートする役割であれば、最初から搭載されているAI機能で十分に汎用的な対応が可能」と回答する。
このビジネスの今後について、村川氏は「当社が抱えていた課題と同じ悩みを持つ塗装会社は少なくないはず。定量的検査の普及が業界の困りごとの解消に少しでも役立てばと期待している」との展望を示した。




