その昔、ある王が、油がなみなみと入った壺を家臣に持たせ、「一滴でもこぼせば命を断つ」と命じた話が「油断」という言葉の由来だという。油が生命の重みに値するほど貴重だったことと、極限の緊張状態の中で注意を怠ると命取りなる。それを戒める説話として仏教の経典にあるらしい▲その油が断たれようとしている。中東情勢の緊迫化による原油の供給難だ。塗料業界にとって原材料の「油(溶剤・樹脂)」は文字通り生命線である。原油の9割以上を中東からの輸入に頼っている日本は、ホルムズ海峡の事実上の封鎖は「油断ち」を意味し、それを生命線にしている塗料業界は、正に「油断大敵」の事態を迎えている▲さあ新年度だ、入社式だ、春の需要期到来だと気勢をあげたいところだが、「それどころではない」というムードに業界は覆われている。溶剤価格の爆上がり、塗料価格急騰への警戒、そして出荷制限という事態にまで及び始め、「ラインが止まる」「現場が止まる」と市場の緊張感も高まっている▲コロナ禍で味わったモノ不足と供給不全が収まり、平時のビジネスに戻っていた中でそこに「油断」はなかったか。原油の国家備蓄放出による事態改善を「予断」することなく、難局を乗り切る判断力と決断力が試されている。VUCAの時代のビジネスが続く(K)