書店で平積みされた新刊のタイトルに目が留まり、手に取った。「日本のインフラ危機」(講談社現代新書)。日本大学土木工学科の教授で、インフラの老朽化対策の第一人者・岩城一郎氏の著書である▲橋や道路、トンネル、上下水道など、1970年代の高度経済成長期に集中的に整備されたコンクリート構造物は、建設後50年とされる寿命を一斉に迎えている。道路の陥没や橋の床版の落下、下水道管の破損などの事故が多発し、昨年の埼玉県八潮市の道路陥没事故は、インフラクライシスの切迫感を印象づけた▲そこに追い打ちをかけるのが人手不足と予算不足である。特に地方の小規模な自治体は、インフラのメンテナンスに割ける人や金が圧倒的に足りない。その解決に向けて岩城教授たちが取り組んでいるのが「橋のセルフメンテナンスモデル」と呼ぶ活動だ▲地域の住民や利用者が簡易な点検と清掃、欄干の塗装なども行って橋の長寿命化を目指す市民協働型の維持管理手法。人や予算の限界を超えるモデルとして注目されている▲その活動を通じ、インフラに対して無関心から関心、愛着へと住民の気持ちが変化する効用がセルフメンテナンスにはあり、それが課題解決の肝になるという。インフラの危機突破は、市民を巻き込んだ総力戦にフェーズが移っている(K)