塗料産業の現状と方向性を探る

日本塗料工業会、日本塗料商業組合、日本塗装工業会の3団体から構成される塗料塗装普及員会は、8月21日(木)、東京塗料会館とウェブ配信のハイブリッド形式で「塗料塗装・最新動向セミナー」を開催した。


日本と世界の塗料需要動向
日塗工

最初に日塗工専務理事の児島與志夫氏が「日本と世界の塗料需要動向」について解説した。
生産数量はコロナ禍の影響が尾を引いており、2022年度から2023年度は1.2%減、直近の2023年度から2024年度も0.8%減となり、コロナ禍以降塗料生産数量の推移は微減傾向が続いている。コロナ禍の影響に加えて、「原材料価格高騰の継続が要因と考えられる」(児島専務理事)との見方。

塗料メーカーの営業利益率は2016年度以降減少が始まり2022年度までその傾向が続いた。ただ、2023年度は価格転嫁の効果が表れようやく上向きの傾向が示された。中でも従業員数300人超の塗料メーカーの営業利益率が5.8%と最も高かった。

分野ごとの動向については、建築塗料は資材高騰や職人不足の影響が継続し、2023年度は減少。2024年度もマイナスが見込まれるものの、2025年度はプラス予想とし個人消費の拡大を期待する。

工業用塗料では、環境対応として粉体塗料がもともと多い分野だが2015年から横ばい傾向で需要の増加は見られていない。それに対して、水性塗料の出荷数量は2019年度を底に2021年度は大きく伸長、2022年度は微減となったものの、2023年度は再び大きな伸長を記録した。

塗料産業のこれからについて、「人口との相関が強いため国内市場は人口減に伴い縮小する」と予想した。一方、海外での生産は「世界経済の減速により直近10年の勢いは鈍るかもしれないが、増加傾向は継続すると考えられる」との見方を示した。

塗料販売業の現況と今後の取組み
日塗商

続いて、日塗商専務理事の澤野英樹氏が「塗料販売業の現況と今後の取組み」について紹介した。

日塗商の会員数は1992年の2,447社をピークに減少傾向が続き、2025年は1,184社となった。社員数は1~5人が29.8%と最も多く、次いで6~10人が27.0%であり、10人以下が約60%となる。更に20人以下の社店が76.2%となり大半の塗料販売店がこの規模となっている。

1社あたりの年間売上額は1~3億円が27.9%と最も多く、1億円未満も含めると、半数の社店が売上額3億円未満となる。

また、人材確保のための実施事項に関するアンケート結果では、最も多かったのが「給与体系の見直し」で28.5%、次いで「福利厚生サービスの充実」12.8%、「自己啓発・資格取得支援」14.7%となった。

事業継承については、「後継者を決めている」が26.4%、「後継者候補はいる」が26.8%であった。「後継者は未定(事業は継続)」は28.8%と3割近くを占め、「自分の代で廃業を検討」が13.6%となった。「会社の譲渡を検討」は4.0%であった。

また、塗料マイスターの第3回スタンダード検定を今年11月25日(火)~12月4日(木)に実施する。次の段階のアドバンス検定については、現在ハンドブックを編集中であり、今年12月に完成を目標とする。検定については未定だが、年度内(令和8年3月)を目標としている。

建築塗装の現状と今後の取組み
日塗装

最後に日塗装専務理事の村木克彦氏が「建築塗装の現状と今後の取組み」をテーマに解説した。

日塗装における完成工事高の推移では、2021年はコロナ禍の影響により減少に転じたが、その後は回復を続け2024年は1兆40億円となり、27年ぶりに1兆円を超える工事額となった。また、1984年に新築と改修の比率が逆転して以降、改修の比率が増加し現在では約85%を占めている。

統計を取り始めた1999年から分析すると元請け30%、下請け70%の比率であったが、次第に元請工事の比率が上がり、2015年からは元請け40%、下請け60%で推移している。近年は更に元請比率が増えている傾向にある。

また、建設業と日塗装の年齢階層別の技能者数対比について、日塗装の65歳以上の割合は約8%であり建設業の15%より少ない。一方、20~29歳の割合は日塗装が19%に対し、建設業は13%となっている。

村木専務理事は「建設業界全体の中で、日塗装は高齢度合いは小さいが、傾向はほぼ同じ」と指摘。ただ近年は若年層比率が増加傾向にあるとした。

外国人材の受け入れについて、技能実習や今後始まる育成就労(2027年4月から運用開始予定)も含めて、外国人材の受け入れをサポートしていく意向。特定技能に関しては、引き続き希望する会員企業を対象に、国への受入計画申請で必要となる本会会員証明書を発刊していく。



日塗工・児島専務理事
日塗工・児島専務理事
日塗商・澤野専務理事
日塗商・澤野専務理事
日塗装・村木専務理事
日塗装・村木専務理事
東京塗料会館と配信のハイブリッド形式で開催
東京塗料会館と配信のハイブリッド形式で開催

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