25年耐久を実現、無機系市場に一石
独自路線貫く

水谷ペイントは8月、新製品となる水系1液型外壁用上塗り塗料「ナノコンポジットMUKI」を投入した。無機系塗料シリーズとして展開する「ナノコンポジットシリーズ」の最上位グレードに位置づけた製品で、業界最高水準となる耐候性能25年を確保。加熱する無機系塗料市場において、得意の樹脂合成技術で差別化を図る構えだ。発売に先立ち7月29日大阪、30日東京で特別製品説明会を行い、塗料販売店、施工店に拡販、採用の協力を求めた。

 


「ナノコンポジットMUKI」は、シリーズとしては2019年に上市したフッ素樹脂系「ナノコンポジットF」以来、9年ぶりとなる新製品。説明会に出席した水谷成彦社長は「当社の集大成とも言える製品。樹脂技術を生かした最高級の外壁用塗料が完成した」と強調。独自技術であるナノコンポジット樹脂塗料の成長拡大に強い意欲を示した。

特徴としては、超低汚染性、超耐久性を保持する高性能超微粒子シリカを採用。これを耐久性、柔軟性を有するラジカル制御型シリコン樹脂で包むコアシェル型ナノコンポジット樹脂を開発したことで、25年相当の高耐候性を確保した。更に酸化チタンの周りに多くのHALS(光安定剤)を配置するハイラジカル制御技術により、長期耐久性と低汚染性を両立した。艶感は3分艶。光沢を抑えた落ち着いた仕上げが得られる。

施工は、窯業系サイディングボードの塗り替えの際、下地調整剤「リフレッシュサーフェーサーエポ」の1回塗りの後、同品の2回塗り仕上げ。工程内乾燥時間(23℃)は2時間以上、最終養生は24時間以上。シリカが均一に並ぶため水が通りやすく、速乾性を保持するのが特長。また塗面がカビや藻の成長に必要な水分を吸収するため、長期間にわたり防カビ、防藻性を発揮する。

同社としては、「同MUKI」を「ナノコンポジットシリーズ」の最上位グレードに据え、塗り替えサイクルの長期化によるコスト削減効果を武器に拡販に注力する方針。価格競争が激化する無機系塗料市場において耐候性能で圧倒したいとの狙いがある。

先見性、普遍性示す

屋根用、床用塗料をメインとしてきた同社が競合ひしめく外壁用塗料市場に本格参入したのは2004年。研究開始から8年の歳月をかけ開発した「ナノコンポジットW」が契機となった。

当時は、シリコン樹脂塗料全盛の時代。発売当初、比較対象のないナノコンポジット樹脂塗料の評価を得るまでに苦労を要した時期もあったが、2007年に科学技術の権威である井上春成賞、工業技術賞を立て続けに受賞。その頃、市場においてもつや消し仕上げかつ耐汚染性を有する高耐候性塗料としての評価を得、以降「ナノコンポジット防藻+」「同F」を揃える高耐候性塗料ブランドとしての認知を高めていった。

そうした流れを受けた「同MUKI」の投入。同社としては、最高級グレードの追加による拡販効果を期待する一方で、ナノコンポジット樹脂塗料の先駆性と普遍性を訴求する機会と位置づけている。

新製品について説明を行った松良昌彦氏(経営企画室次長)が繰り返し強調したのは、「ナノコンポジットWは、販売を開始した20年以上前からナノテクノロジーを駆使したラジカル制御型無機系塗料であった」との指摘。当時は今ほど"ラジカル制御"や"無機"をうたう製品もなかったが、「無機成分を有機成分で内包したナノコンポジット樹脂塗料そのものが無機系塗料」として、現在は市場トレンドに合わせる形で無機系塗料ブランドとして訴求している。

ただ説明会では、市場に流通する無機系塗料について言及。販売、施工の高付加価値策として無機系塗料の人気が高まるが「国内に無機系塗料を対象とする規格、定義はない」と流通製品における無機系塗料=高耐候性の解釈に注意を呼びかけた。

更に同社は、市場に流通する無機系塗料を①シリコン増量タイプ②セラミック配合タイプ③オルガノポリシロキサン添加タイプ④水ガラスタイプの4つに分類。それぞれの特性を示しつつ「塗料として密着性や柔軟性、施工性を確保するためには、有機物との併用が不可欠。決して有機が否定されるべきものではない」との見解を示した。

その中で同社は、ナノコンポジット樹脂塗料を4つのいずれにも属さない樹脂合成技術による独自の無機系塗料として差別化を訴求。説明会では、樹脂合成のプロセスとともに耐黄変、安定性に優れた水系1液常温硬化システムであることを伝えた。 

比較対象のない独自技術で需要を喚起できるか。25年耐久の市場の反応に関心が集まる。



「集大成と言える製品」と水谷社長
「集大成と言える製品」と水谷社長
黒を基調とした缶デザインを採用
黒を基調とした缶デザインを採用

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