社会インフラの維持管理において重要となるのが適切な点検作業。道路のトンネルや橋梁では5年に1度の近接目視点検が義務付けられており、事故防止と適切な維持管理に取り組んでいる。しかし、特に地方自治体では人材不足や財源不足などの課題があり、スムーズな点検作業を進めるには効率化を図ることが重要となっている。そこではロボットやドローン、AIといった最新技術の活用が期待されている。
7月23日~25日に東京ビッグサイトで開催された「メンテナンス・レジリエンスTOKYO2025」では、点検作業の効率化につながる最新技術の出展が目立っていた。

ジャパン・インフラ・ウェイマーク社
ジャパン・インフラ・ウェイマーク(本社:東京都港区)は小型ドローンによる橋梁点検技術を紹介した。同社では2020年4月から小型ドローンでの橋梁点検を開始し、2025年3月までに累計1,166橋の橋梁点検を実施している。橋梁の形式や規模を問わずさまざまな現場で採用されており、47都道府県で点検実績を持つ。

同社はSkydio社と共同で開発した小型ドローンを用いて橋梁点検を実施している。機体上下にある6個の魚眼レンズが360℃周囲を撮影し、その映像をAIで解析し、障害物を回避する。

そのため、GPSに頼らない飛行が可能となりGPSの届きにくい橋梁下においても安定した飛行ができる。

撮影カメラが真上を向くため、従来の小型ドローンでは撮影の難しかった床版下面の損傷を正対位置で撮影することができる。出展ブースでは水管橋点検や洗掘調査・溝橋点検など用途に合わせた製品技術を提案した。

空撮サービス社
空撮サービス(東京都港区)はドローンを使った空撮をトータルで提案している。非GPS環境下でも精密飛行が可能な「TSコントロール飛行システム」が強み。

測量に使われる精密機器でレーザ光を発射して対象物との距離を測る技術を採用しているため、衛星からの電波を利用してドローンの位置情報を取得する技術である「GNSS」がない環境下でも自動飛行が可能となる。

また、飛行経路に関しては、「従来は2次元地図上にポイントを指定しそこに飛行高度を指定することで3次元空間の飛行航路を作成していた」(同社)という。
しかし、橋梁やダムなどのインフラ構造物は立体的であるため、飛行航路の作成が難しいという課題があった。そこで同社ではエヌデーデー社と共同で3次元点群データからドローンの点検用飛行を自動生成するアプリケーションを開発することでその問題をクリアしている。

同社では「これからは地図ではなく3次元点群データから点検用飛行空路を自動生成する時代」として、橋梁やダム、鉄塔などのインフラ点検空撮を提案していく。

デルタ電子社
デルタ電子(本社:東京都港区)は、橋梁点検管理システムを提案する。同システムは、ドローンによる高精度な橋梁撮影とAI解析を一体化したソリューションとして展開している。

3Dモデルをもとに自動飛行ルートを生成し、劣化箇所をAIが自動検出する。点検から報告書作成までを1つのシステムで完結し、効率的かつ安全な橋梁点検の実現を提案する。

点検の劣化検知については7種類で分類する。鋼桁及びコンクリート桁を対象に、腐食、防食機能の劣化、ひび割れ、剥離、鉄筋露出、遊離石灰、漏水の7種類をAIが自動で検知。これにより効率的かつ高精度な点検を可能とする。

同社では「"属人的"から"システム化・継続運用可能な点検体制"への転換」を提案していく。
その他にも富士フイルムの光学技術、画像処理技術、AIを駆使した「トンネル点検DXソリューション」やトヨタが車作りで培ったノウハウを点検業務に応用した、橋梁点検システム「Link Camera」などが出展した。