本紙が前に催行した海外視察ツアーでアメリカのホームセンターを訪れたときのこと。欲しい色を買い求める客で塗料コーナーが賑わい、店頭の調色機がフル回転していた光景が印象に残っている。消費者市場への塗料の普及を実感させるシーンであった▲その盛況ぶりに触発され、国内のホームセンターも塗料の店頭調色機を導入したことがある。しかし、そのほとんどは活躍することなくバックヤードに姿を消した。店頭調色機を置くから塗料が売れるのではなく、消費者が塗料を使う文化をつくったから店頭調色機が必要になった。順序が逆だったわけだ▲ところが業界の一部では、その思考が未だにフリーズしたままのようである。先日の本紙に載った、京都高島屋店内にオープンしたタカラ塗料での顛末を聞いて、「そこじゃないんだよなぁ」と思わず突っ込みたくなった▲ある塗料メーカーの社員が本紙の記事を見て同店を訪ねたときのこと。店内を見回して、そこにいる女性スタッフにこうアドバイスしたそうだ。「店頭調色機を置かないと塗料は売れないよ」▲国内で初めて百貨店の中に常設の塗料売り場を構えたタカラ塗料。B to Cビジネスの先頭を走っている同社に、思わず足がもつれそうな応援が観客席から投げられたようなもの。思い込みって怖い(K)