「どうすれば、もっと上手くなれますか?」。元大リーガーのイチローさんは、子供向けの野球教室でよく出る質問に「野球が上手くなるには道具を大事にすること」と答えているそうだ▲自分のプレーの相棒とも言えるグラブやバットやスパイクなどの野球道具。使用後は丁寧に手入れをし、常に最高のパフォーマンスを発揮できるよう準備をしておく。同時に、それらを作った人たちへの感謝の気持ちを持つことで道具への愛着と信頼が高まり、自信に満ちたプレーにつながる。野球が上手くなる理由だ▲これを塗装に置き換えると、やはり代表的な道具は刷毛になるだろうか▲先日、大塚刷毛製造の秋田工場へ行ってきた。懇意にしている塗装店さんのグループが同工場への見学ツアーを企画、そこに便乗させてもらった▲昭和41年、北秋田郡森吉町(現北秋田市)の誘致企業第一号として同地に開設。国内で現存する唯一最大の一貫生産ラインによる塗装用刷毛製造工場だそうだ▲1本の刷毛を作るのに50もの工程を要し、女性の社員さんたちの手仕事がその多くを担っている。毛揃え、先付け、玉作り、縫い付けなど刷毛づくりの伝承の技によって、1本1本丁寧に作られる塗装用の刷毛。そこに広がる光景が誘うのは、道具を大事に使うことへの気づきに違いない(K)