戦争や災害などの大きな出来事もないのに、社会の基盤が揺らいでいく。そうした事態を「静かなる有事」というらしい。少子高齢化と人口減少が日本の社会や経済の基盤を静かに、しかし確実に蝕んでいく様子をそう表す▲先日、厚生労働省が2025年の人口動態統計速報を公表した。2025年の出生数は70万5,809人と10年連続で過去最少を更新。死亡数から出生数を引いた増減数はマイナス89万9,845人で、こちらは18年連続で過去最多を更新、ほぼ香川県の人口(約90万人)に匹敵する人数が1年間に減った▲人口動態を調査する国の機関(社人研)の予想では、出生数が70万人台になるのは2042年としていたから17年も前倒しされたことになる。出生数も人口減少もここに来て一段と加速し、もはや「静かなる」と呼べない速さに唸りを上げてきた▲産業界にとって人口は、需要と人手の源泉である。とりわけ、半製品を完成品にする過程で担い手の確保が宿命づけられた塗料・塗装業界には、より重い命題となる▲環境の変化が緩やかだと、ぬるま湯から熱湯への変化に気づかず茹で上がってしまう「ゆでガエル理論」。変化への鈍感さを戒めるビジネスや経営のこの教訓は、人口問題にも当てはまる。熱湯への変化に気づいて釜からジャンプできるか。時間は少ない(K)