東京都と災害協定締結、会員メリットも

橋梁をはじめとした鋼構造物における重防食塗装の専門工事業団体である橋塗協は社会インフラの維持管理に重要な役割を担う。槌谷会長に市場の動きや協会の方向性などを聞いた。

 


――橋梁の塗膜に含有する、いわゆる低濃度PCBの除去工事の発注が続いています。
「平成13年7月15日に施行されたPCB廃棄物の適切な処理に関する特別措置法は平成28年に一度延長されましたが、いよいよ処理期限が令和9年3月31日までと迫ってきました。環境省は低濃度のPCBについては処理期限を延長しない考えだと言っています。これは処理を先送りする業者を出さないためだと思われます。処理を期限までにしなかった業者は自治体から罰則を受ける可能性があります。ただ、この対象になっているのはコンデンサーや変圧器などの電子機器の中に入っている絶縁油です」

――管轄する自治体としては早く適切に処理したいということですね。
「そういうことだと思います。低濃度PCBに関しても、自治体としては管轄する橋梁の塗膜にPCBが含有する状況はなくしたいと考えているはずです。現状、特別措置法の影響で塗り替え工事が出ていると思いますが、まだ処理が終わっていないので、しばらくは有害物を含有した塗膜を除去する塗替え工事は全国で発注されると予想されます。橋梁塗装業界としては、しばらくは忙しい時期が続くと思います」

――PCB除去が終わったとしてもメンテナンス需要として、橋梁塗り替えストックは多そうですね。
 「まだ、大分先になると思いますが、PCBや鉛といった有害物を含有した塗膜を除去する塗替え工事が一段落した自治体から、塗り替えのサイクルが空いている橋梁や歩道橋などについては3種ケレンの塗り替え工事が出始めると思われます」

――貴協会の会員の仕事量的にはいかがでしょうか。
「メインの受注先によって異なると思いますが、官公庁から受注している会社は忙しいと思います。人材の問題で受けられない場合もあると聞きますが、概ね堅調と言えます。ただ、工事が大型化してきているので、塗装単体工事の数としては昔に比べると少なくなっているように感じます」

――工事の大型化による弊害などはありますか。
「あります。例えば国交省の直轄工事では橋梁の維持修繕の中に塗装工事が組み込まれる場合が増えていますし、NEXCOの床版リニューアル工事でも同様です。また、有害物を含有している塗膜を除去しての塗替え工事は、従来の3種ケレンの塗装工事と比べると工事費が高額になるために、土木系の建設会社が参入してきて、受注されてしまうケースが増えてきています。異業種参入に対しては、橋塗協としても対策を考える必要があると思います。塗装の専門工事業者として働きかけていきたい」

――話は変わりますが、橋塗協としての最近の取り組みは。
「役員の若返りを図っていて、40代、50代の役員も増えてきました。これから何十年もこの業界を背負っていく覚悟を持っている若い経営者の方たちに、役員になってもらうことが橋塗協や橋梁塗装業界の活性化や発展につながると思っています。また、全国組織ですから今まで以上にDXを駆使して会員同士の情報共有や他団体との情報交換を図っていくことにも取り組んでいくつもりです。現在建設産業専門団体連合会に入会を打診しているところです。専門工事業者として有益な情報収集にもつながると考えています」

――その他に現在の取り組みは。
「地域貢献の一環として災害協定を締結しました。会員のメリットとして入札などでアドバンテージを取るという側面もあり、会員の増加傾向が見られています」

――どういった取り組みですか。
「3月26日に東京都建設局と橋塗協が『災害時における横断歩道協の点検等に関する協定』を締結しました。これは震災発生時に東京から出動要請があった場合や震度6弱以上の地震が発生したときには、橋塗協の東京地区30社が、自主的に歩道橋が健全であるかどうか点検するものです」

――社会的意義がありますね。入札などでアドバンテージになりますか。
「もちろん地域貢献の意味が第一ですが、現実として、建設会社が自治体との災害協定を結んで入札時に加点される工事が出ています。そうした状況を見て、橋塗協としてもできないかと考え各所に働きかけたところ今回の災害協定の締結に至りました。これは会員のメリットにつながると考えて行ったことですが、すべての発注工事に加点されるわけではなく、社会性評価をされる案件の場合のみです。いずれにしても、こうした取り組みは橋塗協としても大事だと考え、まずは東京地区が取り組みました。他の地区では状況も違いますから、その地域にあった活動があると思うので、良い影響が出ればと思っています。実際、東京地区には会員増加につながっています」

――作業環境の改善は課題とされています。特に夏場の酷暑では現場作業の厳しさが増しています。
「地球の温暖化、沸騰化の中で40℃時代が来ました。熱中症対策には休憩所や飲み物やファン付き上着など対策を講じていますが、この40℃前後の気温の中で作業員に熱中症が起きてしまった場合、我々工事会社だけの責任なのでしょうか。夏季工事は休憩をこまめに取るなどしないと熱中症になってしまいます。作業効率は半分になると思われるので、6~9月の夏季工事に関しては施工単価を見直していただきたいと思っています」

――ありがとうございました。



槌谷幹義氏
槌谷幹義氏

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