連携で問題解決へ、情報と"場"提供

7月に高橋大氏(三王・代表取締役)が新理事長に就任した。VOC規制に対応するため2007年に設立されたIPCOは、工業塗装を取り巻く環境変化に対応するために新たな局面を迎えている。IPCOの役割と今後の方向性について聞いた。

 


――近年は工業塗装を取り巻く環境に変化が見られています。改めてIPCOの活動テーマについて教えてください。
「2007年の設立当初からのテーマである『工業塗装の高度化を目指す』中で、まずは環境問題への対応に取り組んできました。これは今後も一番の課題として取り組んでいかなければならないと考えています。工業塗装の環境対応の問題は複雑化しており、『これをすれば解決する』という単純な問題ではありませんし、すべてを解決できるような正解もまだありません。そのため、IPCOとしては最新の情報を数多く集めて、それらの中から今できる有用なことを工業塗装会社さんに取り入れてもらえればと考えています」

――どういった情報を扱うかが重要になりそうですね。
「そうです。例えば工業塗装向けに開発したわけではない製品が、現場のニーズに合う場合もあります。我々がそうした製品やサービスに対して『これなら工業塗装の現場に使える』『ここを改良すれば使える』という判断をこれまでもしてきました」

――いろんな視点や意見が必要となりますね。
「IPCOの会員構成は業種を特定するのではなく、工業塗装会社、塗料メーカー、販売店、塗装機械設備会社、関連団体や有識者など幅広い会員が30名弱です。最近、入会が増えているのが、工業塗装にとってニッチな製品を取り扱っている会社です。工業塗装をメインターゲットにしているわけではないが、活用できる製品を取り扱っている会社が入ってきています」

――主な事業活動である合同会議で情報提供を行っているのですか。
「そうです。現在は3カ月に1回開催しており、合同会議の中で新しい製品や技術を紹介し、興味を持った会社さんに試してもらう。その結果を次回の合同会議で報告してもらうという流れで行っています。検証に時間が必要なケースなど、場合によっては、前段階で塗装会社さんに紹介し使ってもらって、そのレポートを合同会議で発表することもあります。その辺は柔軟にして、より有益な情報をより早くより多く提供したいと考えています」

――他団体と連携した活動も積極的な印象があります。
「団体会員として日本工業塗装協同組合連合会、日本塗装機械工業会、日本パウダーコーティング協同組合が入っているので、各団体の会員さんにも情報は届いていると思います」

――コーティング・コンソーシアムもそうした活動の一環ですね。
「コーティング・コンソーシアム(CoCo)は日本塗料工業会と日本塗装機械工業会とIPCOにより設立されたプロジェクトで、昨年より日本工業塗装協同組合連合会も参画しています。一昨年度は工業塗装事業者を対象に『CO2排出量の意識調査アンケート』を実施しました。そのアンケート結果をもとに、昨年度から工業塗装CO2排出削減ガイダンスブックとチェックリストの作成に取り組みました。CO2排出削減を実現していくために、チェックリストで自社の工場分析を行う。更にガイダンスブックではCO2排出削減の最新の具体策を網羅しており、さまざまな着眼点からの商品や技術が紹介されています。今年度はこのガイダンスブックとチェックリストを広めていく活動に注力していくつもりです」

――工業塗装の現場ではCO2対策に関して、まず何をすればいいのか分からないとの声もあります。
「それは大いにあると思います。その前に自社の状況を把握しなければならないので、そのためにチェックリストを活用してもらいたい。自社に足りないところや課題を把握した上で、ガイダンスブックから最新の情報を得て、使える製品や技術を導入してもらいたいと考えています」

――実際の現場ではCO2対策の意識はどのようにとらえていますか。
「最近は危機感が出始めていると感じます。数年前まではほとんどの塗装会社さんは(取引先などから)CO2排出に関する数値を出す必要性に迫られていなかった。当時それを聞いて私としては危機感を感じました」

――どういうことですか。
「大手アッセンブルメーカーが塗装レスに舵を切ろうとしているとも考えられるからです。塗装業界がCO2対策から"梯子をはずされた"印象を持ちました。だから絶対に自らやっておく必要があります。ガイダンスブックとチェックリストを見て意識を持ってもらいたい。国や顧客などから要請があったとき、塗装事業者さんにはせめて自社の状況を明確に把握している状況にしておいてもらいたい」

――IPCOの役割で重視するのは。
「話し合いの場の提供ということはあると思っています。現代の工業塗装の問題は、つの団体だけでは解決できない次元になっているので、これからはタッグを組むことが必要となり、その機会や場を提供する役割を担っていきたい」

――新理事長としての展望は。
「坂井秀也前理事長にはコロナ禍で停滞していた状況を取り戻していただきました。昨年はIPCOカンファレンスも復活し、今後のIPCOの在り方を見据えた基礎固めをしていただいたので、私はそれを発展させていきたい。次は海外に踏み込んでいきたいとも考えていますし、次世代向けの教育にも力を入れる必要があるでしょう」

――ありがとうございました。



高橋大氏
高橋大氏

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