日本塗料工業会によると、2024年度の高日射反射率塗料(遮熱塗料)の全出荷量は前年比5.1%増の1万5,177トンとなった。前年を上回ったのは、1万5,954トンを記録した2021年度以来3年ぶり。コロナ禍の収束以降、建築用塗料需要が低調に推移する中、遮熱塗料の堅調ぶりが目立つ。暑さ対策に加え、塗装工事の付加価値展開が需要を押し上げたものと見られる。

全出荷量のうち、建築用は5.4%増の1万4,978トン、道路用は18.0%減の169トン。建築用は3年ぶりの伸長、道路用は2年ぶりの減少となった。

2020東京オリンピックの終焉で需要減少を顕著にする道路用と比べて、建築用の伸長がひと際目立つ。これまで建築用塗料全体の市況と歩調を合わせていただけに、今回の伸長は遮熱塗料が独立した塗料品目として市場の認知を得たとも言える。

需要増を後押しするのは、企業による職場環境改善の取り組みだ。
働き方改革と相まって、良好な職場環境が人材採用、雇用の安定に寄与するとして環境改善投資が活発化。塗料メーカーも昨年から企業営繕工事の取り込みに向けた販促展開を加速させており、非電力で導入できる遮熱塗料に対する関心を高めている。

一方、暑さ対策に加え、遮熱塗料需要を押し上げるもう1つの要因に塗装工事の付加価値化がある。建築塗装のボリュームゾーンである戸建て塗り替えが物価高騰の影響を受け物件量が減少。単価アップ策として遮熱塗装の提案が活発化しているとの見方がある。

更に今年6月からは、職場の熱中症対策を義務化した改正労働安全衛生規則が施行された。暑さ指数(WBGT値)基準値を超える際は、熱中症予防対策として作業環境管理、作業管理、健康管理、安全衛生教育を求めたもの。企業に直接投資を求めた施策ではないが、企業の職場環境に対する意識、取り組みが一層醸成されることが想定される。