橋梁塗装など高所作業における革新的な足場システムが塗装業界に披露された。大塚刷毛製造は7月4日、仮設機材の大手・日綜産業の岩間事業所(茨城県)において、革新的足場システム「クイックデッキ」及び「クイックラップ」の実演研修会を開催。重防食塗装会社などから、午前の部・午後の部合わせて30社以上70名ほどが参加、従来の概念を超えた足場システムに目を見張った。
今回同社が研修会を開催したのは、塗装業者と足場業者の意識の共有が目的。足場を架け解体するのが主業務の足場業者と、本来の目的である塗装品質確保のための足場を組んでほしい塗装業者との間に意識のズレがありミスマッチが散見されていた。こうした実態を受け、安全で高効率かつ高品質な塗装作業に寄与する足場システムの情報を両者で共有することで業界発展に役立つとの目的で開催。足場システムトップメーカーの日綜産業とコラボし、業者間の橋渡しを行った。
日綜産業が展開している吊りフロアシステム「クイックデッキ」は、橋梁や高速道路などの改修工事において、発注者や施工者から注目されている足場システムだ。従来の吊り足場に代わる新たなシステムで、高所において地上並みの「しっかりとした作業床」を設置できるのが特徴。安全性や作業効率を飛躍的に高めた。
クイックデッキは、トラス部材を組み合わせた剛性の強い床組みの上に専用のプレートを敷設、無段差・無隙間の作業床を確保できる。チェーンピッチは最大5mスパンで吊り下げられるため、作業の邪魔をせず、養生やダメ直しも簡略化できる。
そして、床組みのトラス部材が自立跳ね出し式のため作業床を次々と増設でき、長大な橋梁改修の足場を安全に設置することができる。これらの作業を、特別な機材を用いず人の手で行えるのも大きな特長だ。
同システムによる「しっかりした作業床」は、フロア荷重200~350kg/㎡で、台車やローリングタワーの使用、フロア上に直接足場の立ち上げが可能、任意に開口部が設けられるなど剛性と自在性に優れる。高さを感じないので安全性や作業効率にも有効だ。
研修では、同システムの組み立てや跳ね出し作業を実演。参加者は組みあがった床の上に乗り、「しっかりしており、これなら怖さを感じない」「チェーンが邪魔にならず、作業が捗る」などの感想を述べていた。
なお、同システムはNETIS準推奨技術に選定。採用実績は2022年までで150万㎡を数え、「国交省、自治体、高速道路会社など発注側からの指定も多い」(日綜産業)と、採用が伸びている。
一方、研修では養生シートの「クイックラップ」も紹介。同品は、熱収縮・密着型・防水性の養生シートで、0.3mm厚のポリエチレン製シートをヒートガンで炙ることによりシート同士が溶着、シームレスに現場を囲える。
これにより、足場内部の有害物質や汚染水の外部拡散を防止するとともに、優れた採光性により明るい作業スペースを確保、安全で快適な作業環境を提供する。従来の板張り防護の代わりとして広がっている養生シートだ。
今回の研修会では、同品で囲った足場内部に空調設備を設置して、現場の温湿度管理を行う「AIラップ工法」も合わせて紹介。仮設足場における近未来の姿を示していた。大塚刷毛では、「今後もこのような実演会や研修会を各地で開催し、業界発展に役立っていきたい」としている。
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