賃貸住宅の原状回復市場に進出

関西ペイントの子会社・関西ペイントブラーノ(東京都渋谷区、小野郁美社長)が展開している「クロスカラーリングサービス」事業が大きく動きだした。賃貸住宅の室内の原状回復を塗装で行う同サービスを不動産管理の大手企業が相次いで採用、クロスの張り替えからの置き換えが進んでいる。同サービスを確立したインテリアペインター協会(福岡県北九州市、宮本伸宏代表理事)との協業体制を強め、賃貸住宅の原状回復市場に塗料・塗装を普及させていく。


関西ペイントブラーノはこのほど、不動産事業全般を展開するタウングループのグループ会社・イズミリフォーム(東京都千代田区、水島久志社長)とインテリアペインター協会の3社で、原状回復工事における環境負荷低減・工期短縮を可能にした「クロスカラーリングサービス」事業を始動した。

タウングループは、賃貸住宅の管理戸数で国内上位ランクに名を連ね、全国で5万戸以上の管理物件を抱える。それらの原状回復工事を手掛けているのがイズミリフォームで、壁や天井の原状回復を塗装で行うクロスカラーリングサービスを取り入れた。

採用の決め手になったのは、塩ビクロスの張り替えによる従来の原状回復に比べて、CO2の排出量を大きく減らせる環境負荷低減と施工時間を半減させた生産性の向上だ。

賃貸住宅で退去者が出ると、室内の原状回復工事が行われる。この際、壁や天井の塩ビクロスが張り変えられるが、それによって発生する廃棄物と焼却によるCO2の排出が課題になっている。塩ビクロスの生産量は年間で6億平米にも及び、その相当数が張り替えによって廃棄、焼却されていることから環境への負荷が大きい。
また、生産性の向上も評価のポイントだ。賃貸住宅の原状回復工事でも人手(職人)不足が進んでおり、少ない人数でいかに多くの施工をこなすかが課題になっていた。

今回、イズミリフォームが採用を決めた「クロスカラーリングサービス」では、施工後に廃棄するのは養生に使ったマスキングテープのみで、廃棄物の発生による環境負荷の差は歴然。関西ペイントブラーノの試算によると、ワンルームタイプの原状回復工事でクロスの張り替え(廃棄・焼却)で排出するCO2が69kgに対し、クロスカラーリングでは0.6kgとCO2の排出が99%以上削減できることが分かった。

また施工性に関しても、クロスを剥がして張り替える従来の方法に比べて作業時間の半減を達成。職人1人当たりで倍の面積の施工が可能になり、生産性が飛躍的にアップ。特に年度末の繁忙期などでの効果は鮮明だ。
「原状回復工事の費用や作業時間を削減でき、オーナー様の収益向上が見込めることが決め手となり、イズミリフォーム様にご採用いただきました。まずは東京と神奈川エリアからスタートし、その後1都3県に広げていく計画」(関西ペイントブラーノ担当者)と説明。賃貸管理では、九州の大手不動産管理の三好不動産が昨年の夏からこのサービスを取り入れており、「社会課題解決の観点で大手企業様ほど関心が高い」(同)とし、訴求を強めていく。

専用塗料の圧倒的な隠ぺい力

クロスの張り替えが席巻する賃貸住宅の原状回復市場に食い込んだ「クロスカラーリングサービス」。それを可能にしたのが革新的な施工方法と、それを支える塗料技術だ。

施工方法はインテリアペインター協会が確立した。養生は枠や巾木などへのマスキングテープのみで、マスカーも使わない。「天井の塗装でも塗料が落ちないほど飛び散らない」(同)と、専用塗料も驚異の低飛散性を実現、養生作業を極端に減らせた。
また、塗装自体はローラーだけによる1回塗り仕上げ。刷毛を使わずに全体を塗装できる特殊ローラーの開発と、関西ペイントが提供している専用塗料の「クロステックスONE」が1回塗り仕上げを可能にした。

同塗料は超隠ぺい性が特長の室内用水性塗料で、「1回塗りの薄膜なのでクロスのテクスチャーを損なわず、2回塗りのようなポッテリ感もない。その仕上がりを見て、『新しいクロスに張り替えたよう』との評価をいただき、仕上がり性も採用の決め手になった」と説明。施工方法及び塗料技術の革新により、施工時間半減などクロス張り替えの諸問題を解決、採用を勝ち取った。

なお専用塗料の「クロステックスONE」は、インテリアペインター協会が行っている実技講習受講者のみへの販売で、オープン販売はしていない。講習費用は5万円/人で、スターターキットは2万円。賃貸住宅の原状回復市場に乗り出せることから、業界関連企業や事業者の注目も集めそうだ。



激しい照明焼けも一回塗りで被る.jpg
激しい照明焼けも一回塗りで被る.jpg

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