アート制作会社・フォーアーツデザインの代表で、デコラティブペインターのヨザン弥栄子さん(写真)。自らを「アーティストと職人の間」と位置付けるアーティザン(Artisan)だ。塗装の価値や魅力を伝える「デザインペイント」の普及活動や、東京・恵比寿の塗料会館のペイントリノベーションの監修など、塗料・塗装業界とも近い存在。近年、塗装ならではの表現力への期待がかつてないほど高まっており「塗装の時代が来ている」と言う。
――ヨザンさんは、「デザインペイント」という名称を商標登録されています。その真意は。
「塗装が持つ豊かなデザイン性を社会に広く宣伝したいと思い、商標登録のかたちをとりました。もちろん、使用権を独占しようなんて考えは微塵もありません(笑)。塗装は、いろんな道具や技法、色やツヤや質感を掛け合わせて無限の表情をつくり出せますが、例えばスポンジで叩いているだけで"エイジング屋さん"とひとまとめにされたりする。それにすごく違和感を覚えていました。だから、装飾性の高い塗装を『デザインペイント』という言葉で包摂し、その価値や魅力が伝わりやすくしたいと思ったのです」
――デザインペイントの定義とはなんですか。
「原型的なものとしてはレイヤーでしょうか。例えば薄いグレーで塗装した面の上に、スポンジングやラギングなどでトーンを変えたグレーを重ねただけでも、そこにデザイン的な意図が含まれていればデザインペイントと言えると思います。そして今、そうしたデザイン性の高い塗装が強く求められていると感じています」
――どういうことでしょうか。
「仕事柄、意匠設計の方やデザイナーさんたちと仕事をする機会が多いのですが、塗装ならではの表現力への期待がかつてないほど高まっていると感じます。海外のトレンドの影響もあるでしょうし、クロスやシートなどのプロダクトに対するデザイン的な限界感もある。ビニールクロスばかりだった住宅の室内でさえ、最近は塗装が広がり始めていると聞きます。色やツヤの豊かなバリエーション、イメージに応える自由な表現力、そして手仕事ならではの良さが再認識されています。塗装の時代が来ていますね」
――塗装業界にフォローの風が吹いているということですね。
「ええ。ただそこで大事なことは、受け身ではなく、何らかの価値を表現する意図を持って仕事に向き合うことだと思います。例えば、その壁の前に立っているだけで人をカッコよく見せる色といったように、単色塗りであっても抜群の効果を発揮する演出力が塗装にはあり、それを引き出すのが塗り手の意図や感性や表現力だと思います。私が塗料メーカーさんとコラボしてデザインペイントの啓発活動をしていた10年前に比べれば、そうした塗り手の人たちもすごく増え、塗装業界もいい循環になってきたように思いますね」
――ここで少し、ヨザンさんが代表を務めるフォーアーツデザインについて教えてください。
「私たちはアートの制作を通じて、その空間を、その地域を心豊かな場所にしたい、そんな思いで活動を続けているアーティスト集団です。エイジングやフォーフィニッシュ(疑似塗装)、トロンプ・ルイユ(だまし絵)やステンシルや絵画的なアプローチなど、さまざまな技法を用いたデザインペイントや特殊装飾ペイント、壁画、ギルディング(箔)、コミッションアート、ヒーリングアートなど創作活動は多岐にわたります。中でも最近は、建物や施設のオーナーさんなどクライアントから直接ご依頼いただいて、デザインのコンセプトづくりから始めるコミッションアートの比率が高まっていますね」
――コミッションアートですか。
「ええ。その建物や空間を利用される方にどんな豊かさを届けたいのかなどクライアントの思いをお聞きし、それをストーリー立ててコンセプトを創案、具体的なデザインに落とし込んでいく活動です。スターバックスさんの多くの旗艦店や、ここ(インタビュー場所の東京・小岩駅前のドトールコーヒーショップ)、ラグジュアリーホテルやハイブランドのショップなど商業建築から公共施設まで幅広く活動をさせていただいています」
――最後に、「いま、塗装の時代が来ている」と言われていたことに対し、業界へのメッセージはありますか。
「先ほども言ったように装飾性や表現力といった面で塗装への期待はかつてないほど高まっており、その機運を捉えるのは、塗り手の方々のアクションにかかっていると思います。いろんな種類の材料や道具を意識的、意欲的に使ってやり方を試していくうちに面白さがどんどん広がり、今はYouTubeなどインスパイアされる教材にも事欠きませんから、いくらでも自分を高めていける環境にあります。そして、それまで数多くの現場をこなしてきた職人さんだからこそ語れることも数多くお持ちだと思います。そうした、もう一段高いプロフェッショナルとして設計者やデザイナーの良き相談相手、パートナーになる。その位置を担える専門工事業が塗装業だと思うし、そうした塗り手の人たちがもっと増えれば、塗装業界の景色も大きく変わるのではないでしょうか」
――ありがとうございました。



