コミュニティ通じ飼い主の信頼を得る

日本ペットフード協会の2025年の全国犬猫飼育実態調査によると、世帯年収が高いほど犬猫の飼育率が高く、年収1,500万円以上の世帯では20%近くが犬を飼育している。ペットと住宅に関する事業を展開するペットライフスタイル代表取締役の中嶋宏一氏は「現在、多くの産業が消費購買力の高いペット愛好家をターゲットとするビジネスに注目しています」と述べ、市場への参入にはペットコミュニティへの参画が重要と強調する。ペット関連ビジネスの現状や具体的事例などについて中嶋氏に聞いた。

 


――ペット愛好家向けのビジネスの実績が20年以上とのことですが。
「2004年から愛犬家をターゲットとしたビジネスを手掛けています。2008年に『愛犬家住宅プランニングガイドブック』を発行、更に『愛犬家住宅コーディネーター』の資格事業も開始したことが事業のベースとなっています。この流れを継続し、現在は『ペットとの暮らしをもっと豊かに楽しくするために』をコンセプトに、ペットとの住まいや暮らしに関する多角的なビジネスを展開しています」

――ペットビジネスの現状は。
「ペット産業の展示会『インターペット』は、昨年の東京会場での出展者が約1,000、会期3日間での来場者は80,000人以上という規模になっており、年々拡大しています。現在、多くの産業がペット関連ビジネスに熱視線を送っており、その1つは自動車で、これまで国内外の多くのメーカーが出展してきました」

――自動車メーカーの狙いは。
「ペットと一緒のお出かけを楽しくしたいという飼い主のニーズへの対応です。ペットが快適に過ごせる車内空間を演出したり、ペット用品を収納しやすい機能的な小物入れのようなグッズを用意したりといった、ターゲットの要望を分析した上でのきめ細やかな提案が行われています。ペット愛好家を対象とする同様の動きは、住宅関連ビジネスでも加速しています」

――具体的には。
「『ペットと豊かに暮らせる』ことにフォーカスした住まいの提案が多くの人を惹き付けています。最近ではモデルハウスや建売販売において、対象を細分化した『犬種別の提案』も登場しています。『トイプードルと暮らす家』というモデルハウスの見学者は、2割がトイプードルの飼い主で、5割が他犬種、残り3割はこれから犬を飼いたい人達でした。ターゲットを絞り尖った提案をするとSNSなどでの情報拡散が加速し、意欲の高い人々に響くことの好例だと思います」

――ペット愛好家は住宅に対しどのようなニーズを抱いていますか。
「犬や猫の病気やケガの大部分は住環境に関係します。例えば、犬にとって滑りやすいフローリングは骨折や脱臼、椎間板ヘルニアなどのリスクになります。特に介護期は注意が必要で、床が滑らないように工夫するだけで歩けなかった犬が歩けるようになるケースも実際にあります。他にも、熱中症予防やペットのための空調の使用による光熱費負担抑制を目的とする建物の遮熱性能向上、鳴き声のトラブルを防ぐための遮音・防音性能向上といったサービスが注目されています」

――ペット向けの住宅ビジネスを実践する場合のポイントは何ですか。
「ペットに関係するコミュニティに参画し、存在を知ってもらうことが重要です。ペット愛好家は、犬の散歩友達をはじめ、同じ動物病院やトリミングサロンの店員や利用者同士といったいくつものコミュニティに所属しています。こうした中で『あのサービスは良かった』といったエピソードは口コミですぐに広がりますし、仲間の生の声ですから強い説得力を持ちます」

――ペットコミュニティへの参画がビジネスにつながった事例は。
「ある工務店さんは、地域の動物病院やペットホテル、ドッグランなどのペット関連施設を掲載したタウンマップを作製して新規案件獲得につなげています。掲載された施設側が、その工務店さんのこともPRしつつマップを宣伝したり、店舗のホームページやSNSでこのマップを紹介したりすることで、その地域のペット愛好家の間での知名度が自然と高まるわけです。結果的に、こうした取り組みで構築したコミュニティでの紹介から大小数十件の受注が決まりました」

――塗料・塗装業界はペット住宅のビジネスにアプローチできますか。
「昨年、長年お付き合いがある塗料商社さんが主催するイベントでセミナー講師を務めました。また、精力的にボランティア活動を行っている塗装業者さんのグループともこれまでご縁をいただいています。こうした交流を通じ、塗料・塗装業界の方々はペット愛好家に向けたビジネスにフィットしやすいとの印象を抱いています。コミュニティ内で『この人を紹介したい』と思わせるには、誠実さや仕事への情熱が不可欠です。地域密着で活動する塗料・塗装業界の方々は、その重要性を熟知していると思います」

――ペットの知見がなければ適切なコミュニケーションは難しいのでは。
「犬や猫の生態や飼い方の基本、住環境に起因する病気やその対策といった知識を得るには、当社の『愛犬/愛猫家住宅コーディネーター』の認定資格が役に立ちます。教材提供からオンライン受験までフォローしており、最短1カ月程度で取得できます。ペット愛好家は信頼できない人に我が子について相談することはありません。名刺に資格取得者であることを記せば選ばれる可能性は高くなるはずです。また今後、当社ではeラーニングやAIチャットボットといったサービスでもサポートできる体制を整える計画です」

――ありがとうございました。



中嶋宏一氏
中嶋宏一氏

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