「未完成住宅」というユニークな住宅の供給が始まる。デザインオフィス9(ナイン=大阪市)のクリエイティブディレクター・久田一男氏が仕掛けたプロジェクトに公的機関やベンチャーキャピタルから支援が決定、活動が本格化する▲住宅を建てる際に、完成度が50%や90%、99%など文字通り未完成の状態で施主に引き渡す「未完成住宅」。残りはDIYで、あるいは建てた工務店や職人の手を借りながら、施主が主体になって自分や家族に似合った家に仕立て上げていく▲例えば、石膏ボードが貼られただけの未完成住宅の室内壁はペイント仕上げがとてもフィットする。完成品の壁クロスよりも半製品のペイントの方が完成へのプロセスをより体感でき、色やデザインの自在性で究極のカスタマイズを提供するからだ▲その後のメンテナンスも必然的に塗装になる。一度経験しているので作業へのハードルはない。塗り重ねていくことで醸し出されるその家だけの趣きや風情が代えがたい満足になり、メンテナンスはむしろ楽しい作業になる。住宅の長寿化に欠けていた「使うほどに自分らしくなる家」といった価値を未完成住宅は提供する▲ローンの返済より先に寿命を終えてしまう日本の「完成住宅」を「使い捨て住宅」と切り捨てる。歪められた住宅文化を軌道修正する(K)