ヒートエナジーテックは2月、「HET技術交流会2024」をウェビナー方式で開催した。村田陽一社長は「カーボンニュートラルの取り組みが避けられない中、エネルギーソリューションカンパニーとして皆様のお手伝いをさせて頂きたい」と述べ、参加した約300名に対し、省エネ技術導入によるコスト効果を分かりやすく紹介した。

今回、コスト低減に寄与する省エネ商材として紹介したのは、高性能断熱材、ガスの熱源利用、廃熱利用。導入事例から具体的なコスト効果を示した。

断熱材においては、非晶質シリカと赤外線不透過材を構造とする材料を高性能断熱材として提案。「熱効率が向上し、使用電力を抑えるとともに、炉体の表面温度を下げられる」と述べ、工場内の作業環境改善やヒーター制御装置の長寿命化に対しても期待を示した。
ゾノライト結晶を基材する断熱材と比較したテスト(炉内温度500℃)では、約18%の損失熱量を低減。炉体の天井、底面、側面の各部においても約12~17%の低減効果を示したという。

更にTS型加熱炉(最高温度900℃、常用温度840℃)の実装では、約4kW/hの損失熱量の削減に寄与すると試算。稼働時間・日数、電力単価などを加味した上で「年間約65万円のコストを削減できる」と効果の大きさを強調した。

続いて、塗装乾燥工程における提案として、ガス式乾燥炉による省エネ効果について説明した。
定常時熱140℃の使用環境で蒸気式乾燥炉(バッチ式)からガス式乾燥炉に切り替えた際、エネルギー削減率は28%、年間42万円のコスト削減効果が得られると試算。動力においてはガス式が11kW上回るが、ボイラ(200kW)からガス式(130kW)への熱源シフトが省エネ効果に大きく寄与するという。蒸気熱風に伴う蒸気配管放熱やボイラ損失など蒸気の熱損失を約20~30%と試算し、ガス間接熱風の優位性を訴求した。

最後の省エネ施策として提案したのは、廃熱利用によるランニングコストの削減。低温廃熱回収(200℃未満)と高温廃熱回収(500℃)の双方において、熱交換器や廃熱ボイラ導入の有効性を訴求した。

材料メーカーで実施した低温廃熱回収改造工事では、1万784kcal/hの熱量削減を実現。年間LPG削減量6,920kg/年、年間CO2削減量20.8トンとし、年間約90万円のコスト削減に寄与すると述べた。「一般的に塗装乾燥炉のような低温域では、投資回収まで時間がかかると言われるが、炉内110℃でも十分な成果が出ている。諦めずに相談してほしい」とアピールした。

またこの日、注目を集めたのは、CO2ゼロを実現した水素直接燃焼式熱風発生装置を採用したUCC上島珈琲担当者による事例報告。
同社は、2025年に主力工場である「UCC富士工場」に水素式の大型焙煎機導入を決定。「珈琲生産は、気象変動の影響を受け、生産地が減少する危機的な状況を迎えている。その中で当社がカーボンニュートラルに向けた取り組みを始めることは非常に重要だと捉えている」と述べ、導入の経緯や機器選定について報告した。