塗装で古家を再生、高利回りビジネス狙う

色やデザインなどペイントならではの魅力で古い空き家に価値を持たせ、賃貸住宅として再生する「ペイントリノベーション」。大阪市の塗料販売店・タカラ塗料(大野一馬社長)が新たに始めた事業だ。空き家問題の解消、良質でリーズナブルな住まいの提供、そしてペイントの経済価値の創出といった3つのミッションを帯びたプロジェクト。興味深いその現場を訪ねた。


大阪府藤井寺市の下町エリア。長屋が軒を連ね、昭和の風情が残る路地の一角にその家はあった。タカラ塗料が「ペイントリノベーション」を済ませ、賃貸住宅として展開する家だ。

同社は今年、2軒棟続きの空き家を購入した。築57年という年季の入った物件で、購入価格は2軒合わせて400万円。同じような間取りの2階建ての長屋で、床面積はいずれも9坪という狭小の建物だ。

ボロボロと剥がれそうな土壁。柱や長押、建具やふすまなど家全体に古めかしさが漂っている(beforeの写真)。放っておけば空き家で終わってしまいそうなこの物件を魅力づけし、賃貸住宅として蘇らせようというのが「ペイントリノベーション」事業のあらましだ。

まずは人が住めるように大工工事や水まわりの更新などを行う。広いリビングへの間取り変更、畳からクッションフロアへの交換、洋式洗浄トイレの設置、浴槽の取り換えなど人が住めるようになるための必要最小限のリノベーションを行う。古家再生事業を行っているカラーズバリュー(東大阪市)にそれらの施工を依頼した。その施工に要した費用が370万円、そこに物件購入費の400万円を足した770万円がタカラ塗料の初期投資額だ。

それに対して、「この辺りの相場家賃の5万円弱/月で1軒あたりの貸し出しを予定しており、単純に計算して15%、管理会社を挟んでも10%以上の高い利回りが見込める」(大野社長)のがこの事業の採算性だ。

色へのこだわりが価値を創出

「部屋を内見に来た方が玄関ドアを開けた瞬間に引き込まれ、この部屋に住みたくなるよう仕向けるのがペイントリノベーションの狙い」と大野社長。ペイントの色や質感、配色によるデザイン性の高さで他の賃貸物件との違いを鮮明にし、早期の客付けを行う古家リノベの新しいスタイル。

従って、鍵を握るのはやはりペイントの使い方だ。壁や天井はもちろん、柱や長押、建具、ふすま、キッチンの扉やタイル、サッシ枠など目に入る部分のほとんどすべてに塗装を施し、「ペイントならではの上質な空間」(大野社長)を演出。タイルやキッチン扉など塗料が乗りにくいところは、「ペインタブルテープ」も活用した。

今回、2軒のうち「右側の家」の配色を担当したのは同社スタッフの坂本奈緒さん(写真)。「この家は、小さなお子さんがいる30歳前後のシングルマザーという想定で色彩プランを立てました」と説明。いずれもタカラ塗料のオリジナル色を用い、優しい色合いの新色「アイビスピンク」(壁)とホワイト系の「ミルクセーキ」(天井)、差し色の「ファニチャーブラウン」(窓枠)を中心に配色をプランニング。2階の子供部屋は、遊び心のあるブルー系の組み合わせでまとめた。

一方、「左側の家」もタカラ塗料の別の女性スタッフがカラーコーディネート。こちらは「アウトドアが好きな30代の男性」という設定で、壁のダークグリーンとホワイト、柱や長押の紫系とのコントラストで部屋を演出した。
「どちらの家も入居される方のペルソナを設定して色彩プランを立てていますが、それによって生まれる空間のストーリー性、賃貸物件とは思えない色づかいが内見される方に響けばいいなと思っています」と坂本さん。居心地のいい色、空間の柔らかさや照明との相性など塗装仕上げならではの演出効果を追求した。

その色決めにおいて、「実際の壁に塗料を塗って配色を検討する」のが同社のスタイル。「プランニングした色が本当にその部屋に合うか、実際の壁に試し塗りをして確認します。場合によっては、その場で調色して微調整を行うことも珍しくありません」と説明。ここでは同社の"調色師"が腕を発揮して究極のカラーマッチングを実現、物件の魅力を高めている。

大野社長は、「今回、壁と天井の塗装はカラーズバリューさんの施工に含まれていますが、その他の塗装は当社のスタッフで行いコストを下げています。築古物件を低コストで魅力的な物件に仕立て、空き家の活用とリーズナブルで満足度の高い住まいを提供。加えて高利回りのビジネスも狙えるペイントリノベーションのポテンシャルを証明したい」と期待を込める。



坂本奈緒さん.JPG
坂本奈緒さん.JPG
before:リノベ前の古びた佇まい.jpg
before:リノベ前の古びた佇まい.jpg
after「左側の家」.jpg
after「左側の家」.jpg
after「右側の家」.jpg
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