塗膜剥離事業に参入、塗装に次ぐ柱に
熱処理式剥離方式で優位性

工業塗装会社のトップ工業(本社・埼玉県川越市、社長・髙橋正氏)は、昨年夏から治具に付着した塗膜剥離の受託事業を開始した。30年以上にわたり内製化していた剥離作業を事業化し、外部工場からの依頼を受け入れる意向。「剥離専業者の減少が進む中、剥離事業への参入は同業支援にも寄与すると考えている」(髙橋社長)と塗装と治具剥離の両立に成長性を見据える。


同社は昭和30年設立の塗装専業会社。自動車用品の他、カセットコンロや建築金物などの民生用をメインに本社川越工場と美里工場(埼玉県児玉郡)の2工場で展開している。

保有設備は、リン酸亜鉛処理ライン(川越、美里)、自動静電塗装ライン(川越)、樹脂塗装ライン(川越)、手拭き塗装ライン(川越)、自動粉体塗装ライン(美里)、カチオン電着塗装ライン(美里)など。平成24年には和光塗装工業所(埼玉県朝霞市)の株式を100%取得し、オートバイのパーツ塗装をはじめプレス・板金加工から塗装までの一貫生産システムを構築。時機を見た積極投資が同社の強みだ。

そうした中、治具の塗膜剥離に関しては、元々30年以上にわたり自社向けに手がけてきた。平成2年に自動車用ワイパー塗装を受託したことがきっかけだが、枠ハンガーにセットする横串治具が新たに必要となり、スピードも含めて剥離の重要性が高まったという。「初めは剥離専業者に依頼していたが数が多いため、治具部材を抱えすぎず、効率的に運用するためには内製化しかなかった」と振り返る。

その結果、当時国内では納入実績が少ないアメリカ製の熱処理式剥離装置の導入を決断。薬液を用いた化学的処理も選択肢にあったが「廃液処理がいらず、産廃物も減容化できると考えた」とあえて熱処理式を採用。その後、数度の設備更新を経て、現在川越工場に1機、粉体塗装をメインとする美里工場に3機の計4機を揃える。

処理量は、ワークサイズと装置の容積に依存するが、1回あたりの剥離時間は約6時間。同社では、1機につき1日3回転で運用している。

装置をフル回転させる理由について髙橋社長は「生産品目の主力である小物軽量部品は、下塗りの電着塗装を行い、そのまま同じ治具で上塗り粉体塗装を行う。そのため毎回剥離を行い、アースを確保する必要がある」と説明。現在は治具と塗装系に応じて薬液処理と併用するが、熱処理式装置を活用したノウハウの蓄積が事業化の基盤となっている。

専用工場を新設、設備増強に着手

新たに治具剥離の受託事業に挑む同社が商機に捉えるのは、剥離に伴う事業環境の変化。
髙橋社長は「人手不足や後継者の問題から剥離専業者の減少が加速しており、外注に依存する我々塗装会社において無視できない課題となってくる」と指摘する。更に「薬液処理においても環境規制や原材料事情から難しさが強まっている」と述べ、熱処理装置を活用した剥離事業に持続性を見出している。

剥離塗膜については、溶剤、水性の各樹脂系に対応し、目安とするリードタイムは入荷から出荷まで3日を想定。更に受け入れ拡充のため処理能力の増強に着手する。
既にテストオーダーから正式受注を得るなど、複数の塗装会社から依頼が寄せられているという。

現時点では、川越工場にある剥離装置1機を受託用として対応しているが、専用工場の設置と合わせて、剥離装置を1台追加する計画。昨年実施された事業再構築補助金第10回公募の採択が弾みをつけた形だ。「塗装に次ぐ新たな柱に育てていきたい」と髙橋社長。内製技術のサービス展開に塗装専業としての成長性を見据えている。



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