テクニカルセンター設置、技術向上を支援
ニシイ(福岡)

九州を中心に22の営業拠点を構える総合塗料ディーラーのニシイ。床用塗料市場の品目構成について「新設は薄膜40%、厚膜60%、改修は薄膜65%、厚膜25%(新設・改修とも水硬ウレタン、木床ウレタンを除く)と見ている」(担当者)と独自に分析。更に品目によって異なるユーザー層にも着目し、「厚膜から水硬ウレタン・木床と、施工難易度が高くなればなるほど施工業者が限られ、結果的に付加価値を高めている」と話す。

そこで同社が注力するのが、塗装ユーザーの技術支援。「九州は、技術に対して高い向上心を持つ地域柄。当社はそうした技術要求に応えていく使命がある」と2018年に「テクニカルセンター」を設立、技術サポートや保守、修理を含めたアフターフォローを行っている。
具体的には、グラコの2液混合装置「リアクター」を導入し、2液ウレタンやポリウレア材料の実機テスト・設置・メンテができる他、床研削機の研修も対応。厚膜塗装や水硬ウレタン、木床改修についても各営業拠点と連携し、実施工にまで踏み込んだサポート体制を構築しているという。

一方、顧客の技術ニーズを顕在化する役割を担っているのが隔年で開催する「未来創造展」。
昨年11月の同展においても省力化や生産性向上に寄与する製品技術に対する関心の高さを浮かび上がらせた。「床関係においても技術習得から付加価値を高めたい要望が寄せられた」と技術支援から塗料ディーラーの価値向上につなげている。

Youtubeを積極活用、塗料の価値を内外に伝える
アイベック(東京)

17本の床材シリーズをはじめ、3年間でYouTubeに投稿した動画は計200本。塗料・塗装を詳しく解説する「アイベックYouTube公式チャンネル」がにわかに注目を集めている。現在、チャンネル登録者数は約9,000人。その中でも、建築施工管理技士受検者を対象にした対策講座は、多いもので4~5万回の視聴回数を誇る人気コンテンツとなっている。

同社が動画配信を始めたのは、社内向けの教育ツールとしての活用が発端。「単発の勉強会を重ねるだけでは記憶に残りにくく、個人がいつでも確認できる動画が有効と考えた」と関口豊社長。以来、パワーポイントなどで作成したアニメーション動画と撮影動画を組み合わせ、動画コンテンツを作成する。「塗料、塗装について、カタログ以上の知識を得たいのは外部の方も同じ。塗料業界のアピールにもなるため社内だけにとどめておく必要はない」と外部への公開配信に踏み切った。

現在、配信しているのは、上述の受検対策講座の他、「危険物乙4対策」「熱シリーズ」「自動車補修」「建築材料」「抗ウイルス・抗菌」「床材」「熱中症対策」「錆と腐食と防食と」など。「床材」コーナーでは、厚膜塗床材の比較実験や取り扱いメーカーの新製品の特長、施工手順を紹介した17本の動画を収録。施主、塗装ユーザーに役立つ情報を発信している。

「今後もメーカーなどとコラボし、動画に限らず、さまざまな発信を続け、業界発展に努めたい」と関口氏。情報発信から塗料ディーラーとしての存在価値を高めようとしている。

地域コミュニケーションに活路見出す
三興塗料(東京)

「時折、近隣の工場や住民から床の塗り替えやアスファルトの補修方法について相談を受けることがあります」と答えるのは、三興塗料の清水雄一郎社長。多くは施工依頼を受けた顧客ユーザーへの応対が占めるが、地域密着を掲げる同社にとってこうした地域企業や住民との関わりが持続的成長に不可欠との目線がある。

地域との関係性をより認識する契機となったのは、2021年に実施した「志村ペイントプロジェクト」。冬の下校時に薄暗くなる通学路に彩りを加えて明るくしたいと同社が発案、施設所有者をはじめ町会、小学校、地元企業に協力を呼びかけイベントが実現した。壁面にはSDGsが掲げる17目標のアイコンの壁画が彩られた。「当時のイベントが新聞やテレビに取り上げられたことで当社の認知が高まった」と以来、床に限らず、建物の補修やメンテナンスに対する相談が増加。「現在、施工請負を検討している」と新たな可能性をもたらしている。

一方、塗料販売業として基盤機能の強化に注力する。特に物流問題を引き金に配送力が一層重要になるとして昨年末にかけて配送ドライバーと調色スタッフを増員した。人材採用が困難を極める中、「地域活動が採用に貢献している」と清水氏。3月17日には、同社がスポンサードする女子バスケWリーグ「東京羽田ヴィッキーズ」と「山梨クィーンビーズ」の試合が同社の冠試合になることが決定。当日、会場ではノベルティと合わせて塗装サービスのチラシを配布する予定で、地域活動やスポーツ支援に地域企業の成長性を見据えている。

ペイント&コーティングジャーナル2024年2月7日号「塗り床・木床用塗料特集2024から」