国内初、百貨店に塗料の常設テナント
“個人消費の本丸“に進出

塗料業界で、国内初の挑戦が始まった。大阪市の塗料販売店・タカラ塗料(大野一馬社長)は昨年12月に、百貨店大手の京都高島屋S.C.の専門店ゾーンに出店。塗料販売店が百貨店のフロアーに常設で出店するのは国内初のケースだ。個人消費の本丸とも言える百貨店への出店は、塗料のB to Cビジネスへ向けた本気の挑戦。産業財の側面が強い塗料に"消費財"のフェーズを開き、新たな需要喚起と付加価値アップにつなげられるか、同社の挑戦に注目が集まる。


タカラ塗料が出店したのは、百貨店の高島屋京都店に接続して新設された「T8」という専門店ゾーン。その4階フロアーに昨年12月13日にテナントをオープン、営業を始めた。

京都高島屋S.C.の専門店ゾーン「T8」は、"アート&カルチャー"をテーマに、現代アートや日本が世界に誇るサブカルチャー、エンターテインメントなどの個性派ショップ51店舗が集結、文化的な消費を刺激するショッピングゾーンとしてオープンした。任天堂の公式ストア「Nintendo KYOTO」や、日本のアニメ・漫画業界をリードするプロたちが買取・販売を行う「まんだらけ」、6万冊のアート書籍が並ぶ「京都 蔦屋書店」など著名なショップと肩を並べてタカラ塗料が展開する。

今回の出店要請は高島屋サイドからあった。「刷毛とローラーで車を全塗装しよう!」などユニークなDIY文化を生み出しているタカラ塗料の活動が高島屋サイドに"面白い"と映り、出店をオファー。「当初は車のDIY塗装に興味を持たれていたのですが、話を進めるうちに関心の幅が広がり、塗料そのものの面白さを伝える専門店として展開することになりました」(大野社長)と説明。国内初となる百貨店内常設の塗料売り場が実現することになった。

「集客力は申し分ない」

「T8」にオープンしたタカラ塗料のテナントは、間口10メートル×奥行き4メートルほどの平たいコの字型のレイアウト。売り場の前面はフルオープンで、正面奥の壁に設えた什器に同社のオリジナル塗料を陳列。ファンシーな容器の中にカラフルな液体が整然と並び、一見コスメ商品の売り場のようなディスプレイだ。
また、コの字型の横手の壁では、賃貸住宅でも部屋を好きな色で塗れる「ペインタブルテープ」のデモスペースや、「車を塗る」「壁紙を塗る」「特殊な塗装をする」などDIYペイントの情報を掲示。フロアーを歩く客のアイキャッチを狙ったディスプレイを展開している。

什器はいずれも黒を基調とした重厚なデザインで造作。その雰囲気とも相まって、「何屋さん?と聞かれることが多い」(大野社長)ことを想定し、オブジェのように設えた刷毛のディスプレイをファサードの壁に展示、塗料のショップであることを表現した。

店舗の営業時間は午前10時から午後8時。タカラ塗料の女性スタッフを中心に3人体制でオペレーションし、店頭でペイントDIYの需要を喚起していく。前掛けと白のワイシャツに蝶ネクタイを締め、さながら"塗料のコンシェルジュ"のような装いで接客、ペイントショップの新たな世界観を演出している。

タカラ塗料のテナントがある4階のフロアーにはキラーコンテンツの「まんだらけ」を始め、コレクター垂涎のアナログレコードが並ぶ「フェイスレコード」など人気のショップが入居。それらの店に挟まれ、「平日でも多くの人が当店でも足を止めてくれる。集客力の点では申し分ない」(大野社長)と絶好のロケーションを得た。

塗料のB to Cビジネスに自信

「海外のように誰もが当たり前のようにペンキを塗る文化をつくる」ことをミッションに掲げる同社。刷毛とローラーで車を全塗装するDIYセットのヒットを始め、インテリア、リフォーム・リノベーション、特殊塗装など幅広い領域でDIYペイントの面白さを伝えて需要を喚起。自社サイトのネット販売はもちろん、大阪市西成区の本店に遠方からも足を運ぶ人が絶えないなど、ファン層を広げてきた。

そしていよいよ個人消費の本丸とも言える百貨店に乗り込んだ。「百貨店に出店したからといって、塗料がすぐに売れ出すとは思っていない。一般の人たちの意識の中に"塗料"の存在自体がないので、まずは塗料という商材があることに改めて気づいてもらう。そして塗料で愛車や自宅をカッコよくして楽しめること、さまざまな問題解決に有効なことを知ってもらい、一歩を踏み出していただく。そのプロセスを経るので、売上が立つまで時間が掛かるのは織り込み済み」と大野社長。

ただ、「電話やメールの対応で日々鍛えられ、一般の人への塗料の説明では日本一うまいと思う」と自負する同社スタッフの接客力、そして塗料のDIY文化を自社なりに築いてきた自信が百貨店での挑戦を後押しした。

B to Bの産業財に終始している塗料に、B to Cの消費財のフェーズが開ければ業界全体の付加価値の向上にもつながる。個人消費の本丸に乗り込んだ同社への注目が集まる。



タカラ塗料.JPG
タカラ塗料.JPG
スタンスは“塗料のコンシェルジュ”.JPG
スタンスは“塗料のコンシェルジュ”.JPG
「ペインタブルテープ」のデモスペース.JPG
「ペインタブルテープ」のデモスペース.JPG

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