都内にいると運転者が黒を基調としたデリバリーバックを担いだ自転車やオートバイをよく見かける。コロナ対策による巣ごもり需要を契機に利用者が急増しているウーバーイーツの配達員だ。今では飲食店だけでなく一部のコンビニの対応もスタートし、配達対象品を広げている▲ウーバーイーツの台頭によって耳にする機会が増えているのがギグワークという働き方で、簡単に言えば好きな時に好きな場所で稼働できるというもの。もともとギグ(Gig)とはジャズの演奏で1回きりのセッションを意味するという。そこから1回ごとの単発で契約して仕事をするスタイルをギグワークと呼ぶ▲親しくしている工業塗装専業者の社長の話を思い出す。「新規案件の立ち上げでは塗装条件の最適化やそれを量産に落とし込むのに苦労する。そのときの1年、1年半の期間だけ経験のある技術者を雇える仕組みがあればいいんだけど」―高給取り(技術者)を正社員として入れるには財務体力の面で厳しい中小規模の工場にとっての切なる願いだと感じた▲労働人口の減少やベテラン技術者のリタイアが増える中で、働き方の多様化が急速に進んでいる今こそ、先の仕組みが望まれてならない。好きな時に好きな工場でスプレー塗装する―そんな時代がいつの日か来たりして(T)