自補修水性システム、「真の実用レベル」へ

自動車補修用の水性塗料が進化している。関西ペイント及び関西ペイント販売は10月20日、大阪本社で記者説明会を行い、バージョンアップした自動車補修用水性塗料システム「レタンWBエコEVシステム3.0」(EVシステム3.0)を発表した。プラサフ、クリヤーの乾燥性、作業性を溶剤並みにするとともに、業界初となる耐擦り傷性クリヤー「レタンWBエコEVダイヤモンドクリヤー」やプラスチックプライマー「同プラスチックプライマー」を投入。水性塗料の課題であった乾燥時間や作業性を「真の実用レベル」に高めることで、水性塗料の更なる普及を図っていく。


自動車補修業界では、人材不足や環境負荷低減などの課題に加え、2024年には労働安全衛生法の改正が予定されている。リスクアセスメント対象物を最小限にとどめるよう、企業が労働リスクを自主的に管理し、リスクの低い環境にしなければならなくなる。「自動車を補修するのは人。そのため、作業者が安全に作業できる環境を整備する上でオール水性は必須になる」(汎用塗料事業本部自動車補修塗料統括部営業開発部・佐藤哲也氏)と説明する。

水性塗料は作業者の負担軽減や安全な職場環境の実現といった観点から、塗料メーカーが積極的に提案しているものの、乾燥性や作業性といった技術的な課題も残していた。その課題を払拭するべく開発したのが「EVシステム3.0」だ。

同社取締役常務執行役員の寺岡直人氏は記者会見に先立ち「自動車補修業界では職場環境の改善や人材不足といったさまざまな課題がある中、当社は以前から水性塗料の普及を柱にその課題解決に取り組んできた。今回発表した溶剤塗料並みの水性システムに加え、業界初の耐擦り傷性クリヤー、プラスチックプライマーの投入によって、安全で安心な職場環境と実用性を両立した。今回のバージョンアップは人、環境、会社に優しい、サステナブルなボディショップ実現に大きく貢献できる」と述べた。

同社は2018年9月にカラーベースだけでなく、プラサフ、クリヤーの水性化、有規則フリーを実現した業界初の自動車補修用水性システム「レタンWBエコEV」を上市した。

その後、2019年12月にはクリヤー、プラサフをバージョンアップさせた「レタンWBエコ EV システム2.0」を発表。乾燥時間を更に短縮した水性クリヤー「レタン WB エコ EV クリヤーQ」、ウェットオンウェット塗装に対応し、作業時間の削減に寄与する「レタンWBエコEV ELSプラサフ」となった。今回の発表は第2回目のバージョンアップとなる。

「真に使える水性」へ

今回発表した「EVシステム3.0」ではクリヤー、プラサフをリニューアルした。水性クリヤーの「レタンWBエコEV EQ クリヤー」は塗料の反応性を制御することにより、60℃×20分と現行の「同クリヤーQ」の約半分の乾燥時間を実現した。また塗料の粘性をコントロールすることで溶剤系クリヤーと同等の仕上がり肌を確保。専用のつや消し剤を添加することで艶レベルを調整でき、マットカラーにも対応した。

「同EQプラサフ」は乾燥時間60℃×20分と現行のELSプラサフの3分の2の乾燥時間となった。反応性をコントロールし塗膜の溶剤と水の揮発を調整し耐ワキ性と乾燥性を向上させた。添加剤の追加により低温、大面積の塗装にも対応可能となった。リニューアルした両品とも乾燥性を上げることで今まで水性塗料の課題となっていた作業時間を大幅に削減できる。

一方、新たに上市したのが、耐擦り傷性クリヤー「レタンWB エコEVダイヤモンドクリヤー」。従来は溶剤でしかラインアップしていなかったが、今回水性塗料としてラインアップした。塗膜の弾性、架橋密度を高めることで擦り傷性を付与。塗料の表面張力をコントロールすることで高い仕上がりを達成した。

「レクサスのセルフレストアリングコートをはじめ、各社耐擦り傷性クリヤー塗料は3~4割ほど使用されており、実際に顧客が塗装の現場で目にすることも多い塗装。従来は溶剤系のものでしか対応できなかったが、水性仕様を確立したことでより作業者の負担を減らせる」と新製品のメリットを強調した。

もう1つの新製品であるプラスチックプライマー「同プラスチックプライマー」は樹脂の吸水性や分子量をコントロールし2~4μmと薄膜で均一な塗膜を形成する。素材へのナジミ性、密着性を向上させ、良好な作業性を確保した。乾燥時間は20℃×15~20分、温風でブローすれば1、2分で乾く優れた乾燥性を持つ。

「今回のリニューアルで、新製品は乾燥性を更に高め、より作業効率を向上させることに加え、仕上がりも向上。溶剤系塗料と同等の性能を発揮できる真に使える水性となっている」(佐藤氏)と自信を示す。

また、従来通り有機溶剤中毒予防規則(有機則)の対象となる溶剤が非含有で局所排気装置の設置や健康診断は不要といった特長を踏襲している。同社では、今回の溶剤並みの作業性へのバージョンアップに加え、有規則フリーという特長を生かし、水性塗料の普及を図っていく。

「EVシステム3.0」は既に現行ユーザーのもとでモニター試験も行い、実用レベルを実証済み。12月からの試験販売を経て来春から本格的に販売していく予定となっている。



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