松山・タカハシを訪問 女性活躍のヒント訊く

「舞台に上がる俳優のように社員にスポットが当たり、お客様から社員に"ありがとう"が届く会社でありたい」と話すのは、愛媛県松山市に拠点を構えるタカハシの高橋信介社長(47)。建築用塗料、土木関連資材の販売を主力にしながら、女性社員が半数を超える独自の体制を築いた。日本塗料商業組合青年部(部会長・森健夫氏)は2月7日、同社で第11回企業研究会を開催。同会メンバー約20名が参加し、同社の経営施策に触れた。


タカハシは、松山市を南北に縦断する幹線道路「松山環状線」から少し西に入った一角に拠点を構える。創業は明治30年(徳島県吉野川市)。創業から1990年代ごろまで木工用塗料を主力とし、その後、建築用塗料をメインに県内のクリーニング店に洗剤や資材を卸すクリーニング事業と、飲食店向けに洗剤や柔軟剤などを販売するクリーンライフ(厨房部門)の3事業を柱にしている。昨期(12月期)の売上高は約8億3,000万円、営業利益は約2,300万円。平成3年に市内中心部から現在の場所に移転した。

社員数は役員3名と社員13名合わせた16名。その内、女性社員が10名を占める。「会社として意図したわけでなく自然とそうなりました」と高橋氏。自身の経歴を交え、女性社員が増えた背景や活性化策を紹介した。

高橋氏は、大学卒業後、2001年に「ボンド」で知られるコニシに就職。土木現場の担当からマーケティング部門で積み重ねたキャリアは、その後同社の土木分野の拡充に弾みをつけることとなるが、家業である同社に入った2009年、経営状況は深刻だったという。「高額な借入金を抱え、若手が育たず退職者も相次いだ。社内の雰囲気も非常に悪かった」と当時を振り返る。

先代の父親から引き継いで社長に就任したのは2014年。そこから抜本的改革に着手する。その1つが、営業、事務の職種間による給与の差をなくした賃金体系の統一だ。

男女間の給与格差を是正

平等かつ柔軟な雇用環境が会社の活力を高めると考えた高橋氏は、営業職、事務職それぞれの役割と責任を明確にした統一の賃金体系を導入。その上で、社員個々の労働意欲に応えるため、みなし残業時間(月26時間及び42時間)が異なる時間外勤務手当、更に社員個々の家庭事情やライフイベントに応えるため遅刻・早退、休暇要請に対する時間制有給制度を設けた。その他、個別で残業なし、時短、土曜の全休(基本はシフト出勤)に対応するなど、労務体制に柔軟性を持たせたことが女性社員の採用拡大につながった。

肉体的負荷が低くない営業職において女性の採用に躊躇する同業社店も少なくない中、「塗料が届けば女性社員も荷下ろしをしますし、朝早く現場に塗料を配達し、そのまま上層階に荷上げをするケースもあります」と女性ゆえのハンデを感じることはほぼないという。現在、営業、配達など5名の女性が外勤業務に従事している。

こうした同社の活力を支えるのが「毎年1年の終わりに社内で取り組んできたことをハッピーエンドとして喜び合える会社にしたい」とする経営理念。大胆な労務施策においても「今や会社として定年まで働いてもらうことを望めない時代。むしろ社員のステップアップや夢の実現を応援する会社でありたいと考えている」との価値観が社員の活力を引き出している。

結果は業績として端的に表れる。高橋氏が社長に就任してから10年で売上高は4億円から倍増。土木分野の拡充や年間売上高の10%弱に相当する豊富な在庫量、調色などのサービスも成長を下支えする。

中でも参加者が驚きを示したのが、女性社員の多さもさることながら、平均年齢39歳、平均勤続年数5年と若い活力で押し上げてきた点。

これについて高橋氏は、"鬼に金棒"の諺に例え、キャリア重視の価値観に一石を投じる。「ヒューマンスキルの高い鬼は、豊富なキャリア(金棒)を持った鬼よりも高いパフォーマンスを発揮する」。キャリアを否定するものではないが、社内外のコミュニケーションや職場の活性化策に伴う社員の意欲に与える影響の大きさを重視する。

最後に高橋氏は、「ただただ良い会社を作りたい想いに尽きる。縁あってともに働くことになった社員さんに恩贈りをしたい。もし当社を去ることがあっても、胸を張って送り出したい」と述べ、講演を締めくくった。



社屋外観.JPG
社屋外観.JPG
高橋信介社長。年間観戦数90試合と大のサッカーファン.JPG
高橋信介社長。年間観戦数90試合と大のサッカーファン.JPG
塗料調色工場.JPG
塗料調色工場.JPG
1階店舗兼事務所を見学.JPG
1階店舗兼事務所を見学.JPG

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